PaaSが開く道

ちょっと後ろ向きに書きます。

クラウド・コンピューティングの最終的な勝者がどこになるかは別にして、このパラダイムシフトはSIerのビジネスモデルにトドメを刺す、そのことが妙にリアリティを持ち始めてきた。

SIerにとって“怖い”のはSaaSよりもPaaS | 日経 xTECH(クロステック)

日本の大手SIerはまずITベンダーだし、そうではない最大手のNTTデータは共同センター化をだいぶ前から推進している。合併しちゃったTISとかインテックとかは知らないけど。で、クラウドの基盤と一緒にアプリまで受注するモデルは意外と変わらなかったりして。むしろ、ハードを余分に売ることが出来ない分、中小SIerを押しのけて小さい案件も取りに来たりしたらこちとら商売上がったりというか、コバンザメにでもなるしかない。はあ。

システム・インテグレーションは複数のハード、ソフトを組み合わせ、意図した通りに稼働するようにするところにビジネスの本質がある。特にオープン系システムが主流の現在では、SIerの最高の付加価値はIT基盤の構築であり、実際にまともなSIerほど、このIT基盤構築を売り物にしているケースが多い。

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そうなの?LAMPだって組み合わせの標準化みたいなものだし、それでは出来ない大規模システムだってもう常套的なセオリーどおりの構成で組まれてハイ終わりってのがその本質部分でしょ。どっちかというと上モノをどう作るかってのがユーザースペシャルなシステムを作る日本のSIerの真骨頂だったわけだ。

ところがPaaSを利用すると、第三者であるPaaSプロバイダがIT基盤を提供することになり、SIerのその面での付加価値は消滅してしまう。つまり、顧客ごとの独自のシステム開発というSIビジネスの本丸の部分に、PaaSは大きな打撃を与える。また、運用・保守といったSIerにとっての別の収益源も、大幅なシュリンクは避けられない。

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じゃあ、PaaSプロバイダって誰よって話だよね。Google?セールスフォース?いやあ、IBMとか日立とか富士通とかNTTデータじゃないかな。
むしろ、「また」どころではなく、運用保守がここのコスト削減の本丸であって、運用を得意とする会社が一番あおりを食うんじゃないかって思う。とはいっても、巨大システムの運用ってのは全部オンラインのものだと思ったら大間違い。今テープ運用している外部データ授受とかが、無数の組み合わせ相手の会社まで含めて一斉にシステム刷新とかはしないわけで。あと紙の運用とか、そういった部分に対して有効なソリューションを提供できるのかどうか。
いずれにしても、適用範囲には限界があるな、とは思う。逆に言うと、適用できるところはこれから置き換わっていく可能性が大きいんだけど。

ところで、大手SIerの下請けに甘んじてきたソフト開発会社にとっては、PaaSは大きなチャンスとなりそうだ。なんせPaaSでは純粋に顧客の業務アプリケーションだけを作ればいいわけだから、顧客の業務を熟知する技術者がキーパーソンになる。大手SIerは実際の開発や運用を下請けに丸投げしているケースも多い。さて、顧客がPaaSを使おうと考えた時、大事にすべきパートナー企業は・・・それはもう自明である。

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丸投げっていっても顔を見せられるかどうかだよね。実際の発注に到るまでの要件は色々合って、瑕疵責任の問題から、巨大システムは資本金がそれなりにないと一時請けになれなかったり、納品までお金がもらえないと期間が長いプロジェクトは日銭が足りなくて請けられなかったりね。中小企業相手の短期間プロジェクトであれば、大手SIerの下請けならずとも今やっているわけで、システム基盤のところはどうせ自分らで作った機械を入れられるわけではなく、設定周りに関してはどうせやるわけで、失敗すると面倒なところがなくなるし、性能要件もそれなりに柔軟に対応できるとなったら失敗の要素が減ってかえってありがたいような気がしなくもありません。
銀行のような巨大なシステムは(一部外部と密接な関係のある業務を除いて)こういうところには乗っていかないだろうし、中小はハードウェア中抜き部分が減るだけで、仕事そのものはそんなに変わらないんじゃないかなあという風に思いますね。