「Guidelines for the NHS」について考える

先のエントリで産科医療のこれから: イギリスにおける診療関連死への警察介入に対するガイドラインに上げられているイギリスの文献、「Guidelines for the NHS」を紹介したところ、「産科医療のこれから」さんの覚書の内容紹介が捏造だという指摘がありました。
個人的には、書いていない、というよりは、書いてある内容から類推するとそれなりに妥当性のある論理的帰結ではないかと思ってはいます。
が、まあ僕も引用元の訳に引きずられて先入観のある解釈をしているということは否めないところなので、英文が得意ではない僕ではありますが、ちょっと見ていきたいと思います。決して訳そうだなんて思っていませんので、意訳推測が中心になると思います。解釈がおかしいのではないか、というツッコミは大歓迎です。
なお、ガイドラインガイドラインでしかないので、何故、の部分は覚書の方が本文と思い、そちらのみ。
http://www.dh.gov.uk/en/Publicationsandstatistics/Publications/PublicationsPolicyAndGuidance/DH_4129918

覚書のサブタイトルの部分に「between the National Health Service, Association of Chief Police Officers and Health & Safety Executive」とあります。この文書はNHS、警察、HSEの三者間での連携を企図したもののようです。

まず、患者が適切な治療を受けるためにエラーがきちんと報告されることが大事だけど、それは医療関係者がちゃんと報告できるような開放性が必要だ、とあります。それには医療関係者個人に対しての措置が公平であることが必要ですともあります。
事件においては、個人の失敗もありますが、システム上の問題というのもあり、その調査に果たすNHSの役割は大きいとされています。
また、他の似たようなリスクの高い産業の経験上から言えば、個人が非難されることがミスの隠匿に繋がる(し、医療もそうである)、と言っている感じですね。
で、はっきりと犯罪であるようなものだけが調査の対象となるべき(This means that such investigations should take place only where there is clear evidence of a criminal offence having been committed or where a breach of health and safety requirements is the likely cause or a significant contributory factor. )とされていますが、そのために何故この手続き(というか合意?Protcol)が必要か、というと、序文にははっきりとは書いていませんね。
あれ、そういえば、forewordが序文だと思ってたけど、それでいいですよね?


さて、イントロダクションにこうあります
・ここ数年で警察の調査が必要な事件が増えている
・事件の取扱いは公正さと正義が必要
言うまでもないことをわざわざ述べている、ということは、今現在の取扱いに疑念があるからという推測がなされるところです。
もっとも、その直後にはその為にこうすべき、ということを述べていますので、そこは恨み節にはなっていません。
3のところは大事なことを言ってそうですが、最後のところのニュアンスがちょっとわからない。その後の箇条書きの部分で
3つの機関(NHSとHSEと警察)はNHSのスタッフに対して予め
・3機関の責任を明らかにする
・法令で定めるところの責任範囲を明確にする
・効率よく短時間でやろうぜ
等々述べられているので、法律を逸脱して物事を行うなよ、というニュアンスでしょうか。

そんなわけで、僕の「つまり、警察による過度の介入が医療関係者の士気を落とし、医療ミスの連鎖や逃散の原因になりかねないということは十分認識されているようです。」という書き方もちょっと過剰だったかな、と思うところはあります。
むしろ、事件がおきたとき、誰がどのように調査するのか、そもそも調査の対象とするものの線引きはどこなのか、が明らかにされている、ということが大事なのかもしれませんね。