振り込め詐欺で簡単に口座が凍結できると別の問題が発生するよ

身内が亡くなった時に色々面倒な思いを経験したことがある人は、本当に必要なときに口座が凍結されていると大変だという実感はあるのではないでしょうか。個人ですらそうですから、法人では尚更。
振り込め詐欺に勘違いされたという事例。

判決によると、原告の旅行会社(東京都新宿区)は06年11月、大分県内に住む女性会員(31)が会費を滞納していたため、父親に請求書を送付。女性は結局は3万1500円を振り込んだが、「身に覚えがない」と話したため、父親が振り込め詐欺と勘違いし、大分県警に相談をした。
県警は、これまでにも旅行会社名による架空請求の苦情や相談を受けていたため、振り込め詐欺の可能性が高いと判断。振込先の口座があった銀行に依頼し、口座を凍結させた。
端二三彦裁判官は大分県警の対応について「口座凍結を依頼する前に旅行会社と女性から事情を聴き、双方の説明の真偽を検討する義務があった」と指摘。500万円の請求に対して大分県に10万円の支払いを命じる判決を言い渡した。女性と父親、口座を凍結した銀行に対する請求は「責任がない」として訴えを棄却した。

asahi.com(朝日新聞社):振り込め詐欺と大分県警早とちり、口座凍結で賠償命令 - 社会

判断の基準がなんだかなあと思うわけですよ。そもそも旅行会社は旅行会社として実在してたんでしょ?会社の情報とかなんて銀行は絶対ちゃんと知っている(口座のある法人の情報が何にも登録されていない日本の銀行などありえない)はずだから、まともな旅行会社かどうかはすぐわかるわけだ。普通に活動している会社が振り込め詐欺を行うことはないし、もし従業員がやったとしても潰れない限り返してもらうことはたやすい。倒産詐欺(詐欺とは限らないけど)とかじゃない限り、失われることはないよね。
だから、事情徴収以前の対応をすれば勇み足な判断をすることはなかった。

判決は、「口座凍結を依頼する前に旅行会社と女性から事情を聴き、双方の説明の真偽を検討する義務があった」というが、こんなことしていたら、本当の振り込め詐欺ならむざむざと現金を引き出されて被害が確定してしまうだろうとも思う。

jugement:たまには警察の味方もしたくなる: Matimulog

というのもわかるんだけど、かといって、こんな話で口座が簡単に凍結されると大変なことになる。困らせたい会社の口座を使って振り込め詐欺(の電話)をすればよいのだ。警察が通報即凍結とかやってくれるなら大変ありがたい。必要なのはトバシの携帯だけで、後は引っかかってくれるカモを探すだけ。どうせ後で被害者は返金してもらえるだろうから巻き込んだ人に申し訳ないとかの心も大して痛まない。
まあ、判決理由が「双方から事情を聴き」というのはいただけないとは思う。前述したとおり、初期対応としては銀行に確認すればよかったはずだ。銀行は会社の情報を公開しないまでも、犯罪性の判断をある程度伝えればよかった。大体、怪しげな高額振込は管理され、報告されている。今回のような少額なものについては報告はされていないけれども、明らかに普段と金の流れが違ったらわかるはず。
でもこれには同感。

それにしても、女性と父親、口座を凍結した銀行に対する請求は「責任がない」として訴えを棄却したというのだが、一番悪いのはこの嘘つき女ではないか。
その旅行会社に申し込んだのを親に知られたくなくて、しらを切ったというのである。

jugement:たまには警察の味方もしたくなる: Matimulog

こういう嘘が罪にならないなら、前述のライバル会社困らせるフェイク振り込め詐欺が成立しちゃうよ。