ツールに含まれる「悪」

いい加減認識は改めるべき。

しかし、ここで注意しなくてはいけないのは、Winnyは悪ではないということだ。確かに、ファイル共有ソフトを利用して、違法にファイルを共有する行為は悪である。だがそれは、利用者がWinnyを悪用しているだけであって、Winnyそのものは悪ではない。

ユーザーの意識改革なしにWinnyからの情報漏えいはなくならない (1/2) - ITmedia エンタープライズ

良く、銃(や包丁やその他諸々)自体は悪ではなく使う人間が悪いって言われるけどさ、かなりの確率で暴発したりよく柄から刃が飛んでく包丁とかは欠陥商品なわけで。
P2P」と「Winny」は単純に同一というわけでもない。P2Pという概念は悪ではないと思うけれども、Winnyは欠陥製品である。作った当人も削除できないメカニズムによって流出情報がとめどなく広がっていくことが欠陥であることを認めている(何しろ「改善できる」って言っているからね)。
違法なファイル共有を身元を隠したまま行える、という機能にたいする副作用的なものでもあるかもしれない。そうだとしたら、そもそも護身用のピストルではなく、殺傷目的のマシンガンみたいなものだ。
善なる用途に使用できる、ということ自体は否定できない。けれども、欠陥が明らかであるP2Pソフトウェアを使い続ける行為を単純に「悪ではない」と言ってしまうのはわざわざ悪に加担するのと大して変わらない。少なくとも、違法な目的で使われているのを知りながら、ネットワークの匿名性やキャッシュファイルの流通に手を貸すという時点で問題がある。たとえWinnyのコンセプトが悪でなかったとしても、現状のWinnyネットワークは悪という他はない。消すことはできないまでも、これ以上の流出を防ぐだけであれば、誰もWinnyを使わなければとりあえずその線は消える。
Winnyは違法ファイル流出に使われちゃった不幸なツールなのか、その目的を十分に果たしている幸せものなのかはそれを未だに使っている人自身が知っているだろう。
〜演説ここまで〜

いや、複雑な気分ではありますよ。Winnyそのものが悪ではない、というのは確かにそうだと思うしそう主張したい。けれどもこれだけ取り沙汰されながらも違法な共有や個人情報の流出が止まらないって現実があるわけで。ここはP2Pは違法ではないが仕掛け的に違法ファイルの流通や個人情報などの流出後の対応が難しいWinnyを使い続けることはそういった使い方をしている人たちに加担していることになる、くらいの主張はメディアとしては必要ではないのかな。発想の根本が悪ではなくても欠陥があることが使い続けることを問題とする。「Winnyを通した流出ウイルスが存在するから」悪なんじゃなくて、それを匿名でやることも容易な仕掛けそのものが重大な欠陥なんだよね。
P2Pに限らず、ウェブの個人対個人の仕掛けはある程度善意で成り立っているとは思う。善が高じてかえって悪を蔓延らせる、という事態にはならないようにしたいものです。