それは為替取引か債権回収か

そういや代引きって微妙よね。ちょっと前に話題になった話。池田先生がつっこみ。ちょっと長いけど引用

あまり知られていないが、ネット通販の利用者にとっては他人事ではない規制が進められている。金融庁が、荷物を受け取って代金を払う「代引き」を規制しようとしているのだ。その理由が驚きだ。代引きが為替取引だからというのである。
犯罪収益移転防止法では、マネーロンダリングを防ぐために為替取引の際に本人確認を義務づけている。今度、これまで銀行に限定されていた為替取引を一般の電子商取引業者に開放するにあたって、金融庁は宅配業者も「金融業者」とみなして、10万円超の荷物は本人確認や委任状がなければ、家族でも代引きで受け取れないことにしようというのだ。当然ネット通販業者やコンビニは大反対だが、為替って外国との貿易の話じゃなかったの?
違うのだ。そもそも日本の法律には「為替取引」の定義がなく、2001年の最高裁判例では「隔地間で直接現金を輸送せずに資金を移動する」ことと定義されている。

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/c710368e297e43259a6638ae5fdbea5d

えっと、まず、為替については誤解があるといけないので一応突っ込んでおきます。言葉の定義は本題じゃないので言いたいことはわかります。

為替は、内国為替と外国為替の2種類に分けられる。内国為替とは、金融機関が、国内の遠隔地で行われる債権・債務の決済を、現金の移送を行わずに決済する方法である。外国為替とは、通貨を異にする国際間の貸借関係を、現金を直接輸送することなく、為替手形や送金小切手などの信用手段によって決済する方法である。

為替 - Wikipedia

法律上の定義はともかくとして、一般には為替というと内為、外国為替の場合はちゃんと外為といいますので、この点ご留意いただければ。あと、マネロンについていうと、記憶にまだ新しい、ATMでの10万以下現金振込不可というのはマネロン対策です。振込は為替ですから、マネロン対策として本人確認ができる、すなわち、現金ではカードで口座から振込ことのみ可能にする、という意図です。諸外国では現金振込みできない(もっともこれにはマネロン以外の理由もありそうですが)一方、日本はATMの機能がいいことで慣習的に現金振込をATMに誘導してやっていたため、いまさらできないとも言いづらく、国際情勢に反して10万まではできるようにしました。
つまり、内為もマネロン監視対象なのね。一定金額以上の定期預金の出し入れは監視され金融監督庁への報告対象になっていますし、最近はアンチマネーロンダリングシステムを導入し、取引履歴を自動でチェックしている銀行もたくさんあります。
さて本題。代引きの扱いは結構微妙です。仕掛けを考えると、これは為替取引か売掛金の債権回収かどっちかになると思うのですが、宅配業者は債権回収会社ではありませんから、扱いとしては為替にせざるを得ない?
あるいは、販売会社が宅配業者に商品を売り、宅配業者が個人に商品を売る、という風に考えたら販売とも考えることができそうです。
それぞれの違いは受取人・宅配業者・販売会社のどこにリスクが存在するかの違いにもなるように思えます。
でも現実的に、代引きの仕組みをマネロンに使えるかどうかというと微妙ですよねえ。だって、マネロンするならお金を払う人がヤバイ金を持っていることが必要なんだけど、宅配業者が住所と電話番号を押さえてやってくるわけじゃないですか。もちろん、偽名で家を借りて、ということも想定されますけど、日本でやっと借りた家を一回の代引きで潰すのは割に合わない。いっぺんに一億くらい洗えれば割が合うんだろうけど、1000万とかでも業者もリスクあるから簡単には受けないような。それこそ本人確認するんじゃないかなあ。
とはいえ、為替取引とも債権回収とも決まっていない微妙な商取引が行われているのも確か。でも代引きでマネロンなんて事例あるの?割と頻繁にあるなら規制はやむをえないかも知れないけど、先に述べたように、割に合わないから規制しなきゃならないほど流行らないと思うしなあ。