「規制脳」が国を滅ぼすのか?

そもそも「規制脳」っていう大雑把過ぎるくくりに乾杯って感じなんだけどね。

「規制脳」の人は、非正規雇用の人たちがたくさんクビになっていると見るや、「企業を規制して、クビにしにくくすればいい」と考える。
こんな規制ができたら、企業は非正規雇用の人の採用をさらに減らすだろう。
すると「規制脳」の人は、「企業を規制して、採用を強制すればいい」と考える。企業規模などに応じて、採用を強制するわけだ。

「規制脳」は国を滅ぼす - モジログ

さらに続いて、ジンバブエに至るとしているんだけど、ジンバブエの規制ってのは、確固たるビジョンに裏打ちされた、経済の発展を目指す規制じゃなくて、「今まで搾取してきた白人から金を取り上げろ!」的な、社会の発展を目指すという点では間違ったビジョンで行われる規制だから大変なことになっているんじゃないの?理屈じゃなくて感情で規制しているんだよね。
「規制脳」を短絡的な理屈で非難しているからには、「規制緩和脳」なんだろうけれども、どちらも短絡的という点では同じぐらい悪いと思う。
たとえば、上の例では、クビにしにくくした結果採用が減った場合(そもそも上の例は正規雇用が減り、非正規雇用が増えるだろうからその点は間違いだと思うけど。首にしやすいから非正規雇用なわけで、派遣等の非正規雇用が首にしにくくなったら雇用形態をバイトにするとかでさらに不利になるだけなんじゃない?)、規制脳の人が採用を強制する規制を考えるっていっているけど、そこがまず短絡的なんじゃないかなあ。規制ってそう一本道で出来るわけじゃないでしょ。
規制の目的は、不公正なものを出来るだけ少なくすることが一つ、あとは社会的、政治的な事情でトレードオフ的に行われるものが一つ。他にもあるかもしれないけど、そんなところなんだと思う。規制なくせなんていうと労働基準法公正取引委員会もいらんわな。
とはいえ、この思考実験の発端であろう「非正規雇用の人が沢山クビ」の事態を規制で回避しようというのは結構難しい。規制は現実解ではないと思う。なんで、現実解でないものまで何でも「規制すればいいじゃん」と考えることを「規制脳」というのであれば、確かに規制脳は国を滅ぼすかもしれない。
でもジンバブエに至る極端な道のみを規制脳として非難するんであれば、その非難はたいていの場合には当てはまらないから意味がない。極端でないものを規制脳と呼ぶのであれば、その規制にまつわる規制そのものだけではない周辺の事情や議論もフォローしておかないといかんと思うんだよね。

経済とはつまるところ、人間でできている。経済を規制で動かすことができないのは、人間を命令で動かすことができないのと同じだ。子供をもっと勉強させたいなら、「勉強しろ!」と怒鳴るのではなく、勉強の面白さに気づかせ、みずから勉強したいと思わせる必要がある。規制を増やすことで経済をコントロールできると考える「規制脳」は、子供を説教でコントロールできると考える親に似ている。

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規制の目的が経済をコントロールすることだとは全然思わない(目的の一部ではあると思うけど)のであまり賛同できないし、悪人が一方的に有利にならないための仕組みでもあると思うから、むしろ必要なものは必要だ、と、必要性についてきちんと考えていきたいんだけどなあ。
結果として利権の温床になったりする規制もあれば、ゆるすぎて抜け道がいっぱいある不公正な規制もあるだろうし、緩和したり、強化したりする必要のある不完全な(というよりはバランスが悪い)規制も沢山あると思うけれども、規制緩和は強者をより強く、弱者をより不利にする可能性を秘めているから、それを防ぐための仕掛けを伴わなくてはいけないし、規制強化はそれによって生じる不公平をできるだけ少なくなる仕組みを考えておかなければならないよね。
政治的な理由による規制で生じた一時的な不均衡は正さなければならないだろうし、社会の変化や情勢に照らして規制すべきものが新たに出来ることだってある。

日本経済が復活するためには、まず日本人が「規制脳」から脱却する必要がある。規制をどんどんなくして、新規参入や競争を活発にしていけば、必ず面白い商品やサービスが出てきて、需要も喚起されるはずだ。

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規制をなくす=新規参入や競争を活発にする、ということが本当になりたつのか。冒頭の雇用の例はこの図式に当てはまるのか、とそういうところを抜きにして「規制脳」と追われても困っちゃう。終始楽観的なビジョンで「規制緩和すればいいじゃん」というのはやっぱり「規制緩和脳」だよなあ。必ず〜はずだというところが証明された方程式に見えない以上、お試し的にやってみるのはいいけど、直ちにいろいろなものに適用すべきとは考えられないな。国内の規制がなくなることで外国に安くものを売ることが出来ました、じゃあつまらないよね。