大局的な目で見ると、利用者の利益を害するのは包括契約だ

JASRACが行う包括契約に、公取委排除命令を出したことは実に画期的な出来事だったのですが、JASRACにより反論が行われたようです。

日本音楽著作権協会(JASRAC)は28日、2009年2月27日付で公正取引委員会から受けた排除措置命令に関し、命令の全ての取り消しを求める審判請求を申し立てたと発表した。JASRACでは、「大局的に見れば、権利者のみならず利用者の利益をも害する」としている。

http://journal.mycom.co.jp/news/2009/04/28/056/index.html

はい?大局的って言葉、わかってる?
局所的というか、すぐに考えられる影響として、手続きが煩雑化して、コストも上がるから、JASRACおよび権利を委託している人側の負担でそれが賄えなくなれば利用者側にも跳ねるのは明確。でも、そこを乗り越えてこそ公平なシステムが出来、競争が生まれるわけ。利用者に最終的な利益が還元されるのはそれこそ大局的でしか見えてこないビジョンです。
かつては番組でどの曲がどのように流されたかを把握するのは容易ではなかったし、それを個別にチェックして資料にするのも容易ではなかったと思う。でも、これからはそういったものは自動化することは可能だし、自動化することによって削減されたコストによって曲あたりの手数料は下げられる。JASRACが生まれ、ここまで来たときの事情が参入障壁になっている現状を打開するためには包括契約をなんとかしないといけない。

その上で、審判請求において、以下のように主張している。

  • 放送事業者が放送使用料の追加的な発生を回避するために、他の管理事業者の管理楽曲を利用しないということはなく、利用しないと考えることに合理性がない
  • 包括契約は諸外国のほとんどの著作権管理団体で採用されている
  • 包括契約の対象となるJASRAC管理楽曲数は一定ではなく、年々増大している
http://journal.mycom.co.jp/news/2009/04/28/056/index.html

最初の主張から世の中の認識とずれていると思うんだけど、どう考えても、楽曲のほとんどを握っているJASRAC包括契約をすればそれで十分ネタが揃ってしまう現状で、他の管理事業者の管理楽曲を利用すると考えることの合理性がありません。で、その状態がJASRACの努力から生まれたんだったら誰も文句は言わないと思うけど、過去独占団体であったという経緯から生まれた、つまり、既得権益であることが問題なんだよね。
諸外国の件を例に出しても、たとえばアメリカだったらASCAPとBMIという勢力がいて競争できているという点では全然違う。そもそも、過去の話ではなく未来の話を考えなければならないんですよ。
なぜ包括契約が参入障壁とみなされるかをJASRACは理解してほしい。JASRACの批判の多くが「不透明」「後付」「強引」である点についてだということも。業界最大手として、使用楽曲報告清算システムをがっつり作って利便性の点から「さすが最大手」と言われて君臨するような態度を望みたいわけですが。それなら文句も出ないはず。