二郎で学ぶ待ち行列、あるいはスタバ注文前席確保戦略について

タイトルは大げさです。
このエントリ自体は最後のオチのために書かれた話で、全体最適がどうとか本気で語っているわけではないと思うんだけど、ちょっと気になったのは、先に席を取ることがものすごいオーバーヘッドになっているような印象があること。

顧客一人あたりが座席を占有する時間が増えるということは、回転率が悪化するということを意味する。店はそれによって売上を下げるし、顧客も利用したい時に座席が開いている確率が減ることになるだろう。これは、両者にとって不利益な結果だ。

スタバで注文前に席を取らない方がいいいくつかの理由 - よそ行きの妄想

という記述があるんだけど、回転率が悪化するのには条件があって、この場合は、カウンターが注文を受けられない時間が増えることが条件。そうでない限り、待ち行列の長さ(平均待ち時間)は増えるけど、回転率は変わらない。

例を上げてみよう。

12席ある二郎で1ロット調理5分食べるのに10分かかるとする。最初の10人に二郎が提供されたあと、2人+店外の3人に注文が飛び、その二郎が出来上がったタイミングで最初の5人が食べ終わり入れ替わる…となると、永遠にこのサイクルを繰り返すことができるから、席が足りなくても回転率は変わらない。
ここで、着席してからしか注文できないルールにした場合はどうなるかというと、最初に10人に二郎が提供されたあと、2人分の注文しか受け付けられない。この2人分の二郎が出来上がったタイミングで始めの5人が食べ終わるので、最初の仮定では5+5+5サイクルだったのが5+5+2サイクルに変わってしまう。これは回転率としては3サイクルで3杯分の損をしている。
では、この着席注文ルールを変えないで回転率をキープするためにはどうすればいいかというと、席を15席に増やせばいいわけだ。

さて、スタバ問題に戻ると、回転率を悪化させるためには、「席の空き待ちで注文ができない」客が列をなすという状況が生まれる必要がある。つまり、単に行列しているだけではなく、行列しているにもかかわらず、カウンターが暇な時間があることが重要だ。そもそも客がちょうど平均滞在時間だけ滞在していき、そのぶん新しい客が来ると仮定した場合に増える時間は、実のところ、先に席を取らなかったときに比べて先に席を取った場合、席の2回転目の最初が一番最初の人が席を取るのにかかった時間分だけ増加するにすぎない。
ひっきりなしに客が来て、席のキャパよりも増加人数が多い場合は、コーヒーを受け取ってからの席の待ち時間が増える。なので、そのくらい回転率の悪いお店はいつか席を待つ人で店内が溢れ、結局のところ注文が滞る=回転率が落ちるのである。そして、きっと評判も落ちている。
であるならば、お店は注文したのに席がない怒りを買うよりも「席が取れないなら今日は諦めるかあ」という自分から諦めてくれる客を期待している。そのことによって待ち行列はお店のキャパシティーに対して適正化されるので、かえって席を確保できる可能性は上がるのである。

というわけで、みんな遠慮せずに先に席を確保するといいと思うよ!