なぜ「模倣バカ写真」が量産されるのか

日本人の衛生観念はいい意味で過剰だと思うことが多いのですが、それはある意味日本で暮らす人間であることの喜ばしさみたいなものでもあって、アイスのケースの中に人が入って撮った写真などが非難を集めるのは常識で図れる出来事だと思うのですが、なぜか、もしかしたら人生を賭す行為になるかもしれないそれを平気で模倣する人が後を絶たないという現実があります。

これをバカの仕業と言ってしまうことは簡単なんですけど、本当にそれだけが理由と考えて良いのかどうか。

すでに指摘があって2番煎じみたいになるけど、少し考えてみる。

本質的に無意味なことを面白がるというのはどこにでもある話で、誰かがやったことを「面白そうだから俺もやってみよう」というだけでやってしまう、という(はっきり言ってしまうと思慮深くない)人達がいて、その人達にとっては単にハメを外したお遊びでしかないわけです。問題は、一昔前のその流れはテレビ→ローカルであり、ローカルの行為は仲間で共有するだけのものでしかなかったのに、今はウェブ→ウェブであり、ウェブの行為は全世界に公開されているよ、ということへの区別のつかなさにあります。

もう少し細かく分けると、問題は2つ。
1つは、ウェブに公開された(彼らが模倣しようとしている)対象が酷い結末を迎えたということにあまりに無関心なこと。
1つは、自分の行為を共有しようとする行為が結果として酷い結末を迎えた模倣対象と同一の問題を抱えていることに気づかないこと。
前者は、「バレなきゃいいんだろ」という思考の結果だと思うし、後者は自らバラしているということが理解できていないということでしょう。

ありていに言ってしまえば「やんちゃ」は見せびらかさなければ意味が無いんだけど、見せびらかすためのツールがいつの間にか全世界公開ツールになってしまったために、本来伝えるつもりのない層に「勝手に」伝わっている、という悲報的な何かではあります。

ここで結構重要だと思うのは、「やんちゃ」を苦々しく思っている層(往々にしてリテラシーが高いまたは高いと思っている層)にとって、これは望んだ世界であるということ。つまり、彼らの悪行(と常識的には思える行為)を直接責めるとどのような仕返しをされることやらわからないけれども、昨今では彼らはこうやって自爆していってくれる。いきおい、このような自爆ネタを掘り起こすことに血道を上げるようになります。罠をかけるまでもなく勝手に自爆してくれる。そりゃRTもしますわと。

つまり、これは世の中のウェブ化によってやんちゃを根拠としたモラトリアムが取り上げられる一大ムーブメントの始まりに過ぎません(大言壮語)。

ちょいちょい言われる「「昔やんちゃしてた」くらいの方がとっとと結婚して子供を持って幸せそう」に対する復讐ですよこれは。

本当にそんなんでいいの?という疑問はありますよね。品行方正に生きるほうが損するって品行方正ってのは損得でやるのか?みたいな部分もありますし、そこで復讐したらいかんでしょうと。でも多分これは格差の広がる社会の一つの病理です。広がっている格差は、いわゆるDQN層と真面目層の格差を低い側で接近させている。そういうフラストレーションがある限り、模倣バカの発掘に血道を上げる人はいなくならないでしょう。

模倣バカのほうを撲滅するのはまあムリだと思う。