ワタミは体力がないから最低賃金でしょうがないという会社なのか

釣れますか?(挨拶

外食産業というのはまあ過酷ですよね。居酒屋なんて不審の最たるものでして、そこから脱却をはかった三光マーケティングの起死回生の一手、東京チカラめしは結果として惨敗に終わりましたし、とにかくチェーン店は安売り合戦で利益率が落ちています。まあ脱却先が安売り合戦で利益率が落ちている牛丼業界でしかも逆に客単価に好転が見られる企業が勝ち残っているというなんとも言えない状況になっておりますけどね。

さてさて。

topisyuがこの批判でモヤモヤした理由は、よくよく考えてみると以下の3点に集約されました。

法律を遵守しているのに、さも問題があるかのように批判していること
すでに経営者ではない渡邉美樹氏に責任があるように見せていること
体力がある企業ならば賃金を最低賃金以上にしなければならないと主張していること

ワタミは十分に体力がない企業なので最低賃金での雇用を継続するべき - 斗比主閲子の姑日記

という指摘をtopisyuさんがされているのでちょっと僕も考えてみたいと思います。やじうまです。

もちろん、背景には、現内閣による経済界への賃上げ要請(とその成果があると主張していること)と、共産党による最賃の引き上げ及び最低賃金法の改正の主張があるにせよ、ここは現在の最低賃金が『労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができ』ない水準であることも合わせて主張しないと、立法府である国会の価値を貶めることになるのではないかとモヤモヤしたわけです。

ワタミは十分に体力がない企業なので最低賃金での雇用を継続するべき - 斗比主閲子の姑日記

まあ外食産業というのは過酷なので過去にも「正社員だけど残業代がつかないと最低賃金」というオカシナ給与体系になっていた会社が過労死訴訟で負けてたりしておりますね。過酷なので仕方ないですね。
僕がモヤモヤするのはですね、最低賃金をキープしないとやっていけないような会社の創業オーナーが会社ほっぽり出して議員になってなにするつもりなのってあたりですね。共産党の批判も最低賃金の水準そのものを問題にしているというよりは、金融緩和、インフレ誘導、消費税増税法人税減税という政策が「景気が回復する=賃金が上昇する」ことを大前提としているのに政策を推し進めている与党の人間が所有する会社ですらそうなっていないではないか、という政策批判であって(もっとも、為にする批判臭があることは否定できませんが)、国会で行われるやりとりとしては極普通の話なんじゃないかとは思います。
法律なんて現実の問題に対して後から追い付いてくるものでしか無いので、企業の責任を考えると賃金を上げながら活動を継続していくという線をきちんと模索していかなければならないとは思います。
この点についてまとめると、「最低賃金なので法令には違反していないが、政策でうたっていることと乖離している実例として自民党はしっかりと答弁すべき」なんじゃないかと思いますね僕は。

渡邉美樹氏が実質会社を支配しているのだから所有と経営は一体ではないかという観点については、渡邉美樹氏の現在の保有分は、資産管理会社と考えられる有限会社アレーテー経由の25%程度であり、筆頭株主であるものの、支配株主ではありません。また、すべての役職を昨年辞任しています。

ワタミは十分に体力がない企業なので最低賃金での雇用を継続するべき - 斗比主閲子の姑日記

この点についてはあまり外形的な事実で語る意味は無いでしょう。
事実上創業オーナーとして企業を支配しているというのは間違いないでしょうし、ワタミについてコメントもしています。(渡邉(わたなべ)美樹 - 先日の参議院予算委員会で共産党の小池晃さんが... | Facebook

"体力がある""支払い能力がある"などと曖昧な表現でやり玉に上げるのは、批判の方法としては恣意性が高く不適切だと思い、モヤモヤしたわけです。

ワタミは十分に体力がない企業なので最低賃金での雇用を継続するべき - 斗比主閲子の姑日記

自己資本比率が低いから体力ないのでは?とのことですが、単純に自己資本比率でいうと平均をちょっと下回る程度ですよね。むしろそういう意味での体力というよりは業績がよろしくない(営業利益予想が去年の半分程度)というほうが問題ですね。そういう意味では「支払い能力がある」とは到底言えません。そろそろヤバイんじゃないのこの会社というほうがまだ正解っぽいですね。まあ飲食業など利益率5%あればよろしいほうなので、薄利多売を戦略とするワタミの利益率が低いのは当然とも言えます。まあやばいやばいって言っても連結純益予想で12億ありますけどね。営業利益なら50億ね。

サービス業特に飲食業は人件費がかなりの割合を占めますから、経営の工夫ってのは人件費を削減することに繋がりやすいですよね。ただそれは一人頭で安くこき使うということとはイコールではありません。

というわけで、ワタミが「最低賃金で雇う問題のある会社」と決めつけて語るのは確かにちょっと無理筋な部分はあります。もっとも、上場企業として考えた時に、本当にそれでいいのかというのは企業の社会的責任という観点では問題があります。特に、実質オーナーが国会議員として国の政策にコミットしているということは周知の事実であり、渡辺氏が国会議員としての職責を果たすにおいてはこの点は大きなツッコミどころであると思っています。
もちろん、政府が言うところの「景気は回復してきている」ということは少なくともワタミにとっては事実ではなく(業績下方修正していますからね)、その結果として最低賃金で雇うことを継続しなければならないのであれば、それは政策に問題があるのではという疑念につながります。

もっとも、ワタミの問題は高コスト体質であるワタミ自身の経営にあるかもしれず、その点において渡辺氏がどのような認識をしており、どのように国政に生かしていこうと考えているかは重要な事です。ともあれ、彼自身はそういった部分についてはあまり情報発信されていないように思えるので、国会議員としてもう少し明確なスタンスで活動してほしいものです。