波王の秋 / 北方 謙三

波王の秋(とき)
北方氏が歴史小説に参入したのは中世(南北朝)ものなのですが、その締めくくりというべき一編。氏の漢の生き様への主張が余すところなく語られています。ただ、今までの中世ものよりフィクション度合いが強い。時代を借りて自身のハードボイルド論を展開した趣が無きにしも非ず。話自体は無駄もなく、非常に面白い。凡百の架空戦記よりよっぽどマシですね。いろいろとこだわらない人にはお薦め。

葉桜の季節に君を想うということ / 歌野 晶午

葉桜の季節に君を想うということ
実は、ネタバレしていたのです。同じ時期に刊行された某氏と根本のネタが被っていると言うことで。それでも読了後は面白かった。伏線の張り具合がよくできていて、文章のタッチそのものも伏線(というよりミスディクションか)になっている。
ただ、メインのトリック?と作中で起きている事件があんまり関係ないのが残念至極。そういう意味ではかぶった某氏のほうがよくできていた。でもまあ、最初の何ページかで文章に嫌悪感を感じて読めない人とかもいそうな気がしますね。