現状の何が不満なのかをもっと明らかにして欲しいよ

日経の記事によると、JASRACを初めとした著作権利者団体で著作権の集中管理に乗り出すそうで。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20070125AT3Y2300525012007.html
そのこと自体は悪いことじゃないし、今も各団体個別にやっている話ではあるんですが、JASRACと同じスキームに乗るのかそれとも単にポータルを共有するだけなのか。以下JASRACに近づいていくと言う仮説の元で。
JASRACと同じようになるならこんな感じか

  • 肯定的な効果
    • 二次使用や転載の明示的な許可が取りやすくなる
    • 登録されているものなら使用を拒否されることがない
    • 使用料の徴収によって著作者への利益還元がなされる
    • 違反に対する摘発が団体として実施可能
  • 否定的な効果
    • 暗黙の許諾が結果としてできなくなる
    • 利用料によって二次使用が減る
    • 著作者自身も自由に使えなくなる

こんな感じか。もちろんもっとあるでしょうけれども。Web上での利用を考えると、引用と転載の境のところで転載と見做されたり、(日本の変な同一性保持権の例のもとでは)パロディーやセリフ改変ネタが違反と判定されたりするときに、著作者本人の意思に関わらず団体から削除を求められたり訴えられたり後付で使用料の徴収をされたりと言う可能性がありますね。当然ながら過去の記事だから免除されると言うこともないでしょうから、名言の紹介なんてのも危ないかもしれませんね。
こういうことを推進するのはもっと金儲けをしたい業界側と一部の不当に権利を侵害されていると思っている著作者だと思うのですが(文化審議会とかもありますが)、その本音は「権利を守ろう!それによってもっとお金を!」だと思うんですよね。現状に不満があるというか、本来もっと利益が得られていいはずだ、と思っているわけです。新古書店とかマンガ喫茶を問題にするのもそのあたりだろうし。ちょっと前に貸与権が本にも認められることになったけれどこれには大きな問題があってそれについてはhttp://publiccomment.seesaa.net/article/783736.htmlに詳しいです。このように権利強化の方向に進んでいく現状で、さらにJASRAC的なものを作ろうというのはなんだかマーケットのことを勘違いしているんじゃないかともなんとなく思えてきます。需要が萎んだり、売れるものだけが選別されていくと言う未来がありうるかもしれない。影響の試算が楽観主義だけでされていないかが気になります。大体管理団体だって現状でこんな主張をしています。コスト削減のための図書館民間移行論まっさかりなのにね。
結局のところ、お金儲けをしたいというのが本音であるのであれば、その本音はすぐに分かってしまいます。コンテンツ産業と言うのが構造としてはある程度特殊なところであると言うことを認めたうえで、あえて一般化してみると、利益を上げるためには、売上を上げかつ原価を落とすことが必要です。また中間マージンをできるだけ圧縮し、今ならWeb2.0的なマーケティング*1で認知度を上げる戦略なども重要です。それ以前に商品自体に魅力が無いと始まらない。世の中の一般社会人が給料の上がらない中一生懸命コスト削減に励んでいるときに、仕組みの拡充で搾取可能性を上げるという戦略が果たして態度として正しいのかどうか。新たな囲い込みビジネスの創出ならともかく、既存の権利拡大に過ぎないわけですから。そして商品の魅力がもっとも根本であることを忘れずいいものを作ることを目指して欲しいものです。
専門書が絶版になったり新しいものがでなかったり〜という問題をあげる人もいるけど、もともとはそういうマーケットを作り上げた業界の責任なわけですから、そこを憂うのであればむしろ今の業界と決別する方法を模索した方が良いと思ったりもします。
うーむ、憶測だらけですね。ポータルとやらがどう作られ、それぞれの管理団体がどういう運用をするのかがわかってからあらためて書いてみたいですね。

*1:書いてて恥ずかしいな、これ