ホワイトカラー労働のあるべき姿を話そう

伊藤忠商事の会長かなんかが本音トークかましてしまって、経済界はホワイトカラー・イグゼンプションは残業代抑止+休日出勤強要のための制度であると言うことだと考えている証拠がまた一つ増えてしまったわけですが、建前をいくら取り繕っても本音がそこにあるのでは反対を叫ばざるをえません。本来想定されている用途で適用されるのであればよいのですが、大企業ですらこれじゃあ中小の惨状は火を見るより明らかです。
さて、べき論と言っても単に一つの見方として捉えて欲しいのですが、少し考えてみます。僕はこのあたりのことを勉強したことがないので駄論かもしれません。あと全部本音ではありません。念のため。

労働の基準の基本は時間だ

少なくとも最低賃金のラインでは労働は時間に直結している必要がある。正当な理由があれば何もしないことも拘束と言うことで仕事のうちである。これは、企業が必要以上に賃金を下げることの抑止としても必要。
このときに、残業を求めるのであれば、時間に対する対価は支払われるべきである。また、稼働時間によらず月の最低賃金は社員であれば後で書くペナルティー以外の部分については保障されるべき。

プラスアルファの成果

職能により「標準稼働時間で何ができるべきか」を定義することが可能であれば、まず最低ラインの設定が可能です。標準稼働時間を達成していれば先に述べたとおり、拘束時間としての最低の給与は保障するとして、標準稼働時間を達成していないかつ最低ラインを達成していない場合、ペナルティーがあっても良いでしょう。ここでの最低ラインは「持っている能力」と「拘束時間」によって支払われるべきもので、つまり、会社としてその人を所属させるコストと言うことになります。もちろん、標準稼働時間に達していなくても、職能における最低ラインの仕事をこなしているか、時間を費やさないに足る理由があるのであれば、最低ラインの給与を保障します。
そして、成果。これも判断は難しいですが、最低ラインを上回る仕事をした場合、成果を上積みしたとして、ボーナスか月給上積みかは問いませんが何か還元します。

残業をさせない

残業は基本的にさせないべきです。残業が発生すると言うのは以下のことを意味しています。

  • 指示した仕事が能力に対して多すぎる⇒上司の評価力不足
  • 人員が不足している⇒上司のマネジメント能力不足
  • さぼっている⇒ペナルティー対象
  • 外部要因によるトラブルが発生している⇒「正当な」予定外残業

仕事の量によらない残業については8時間を越えた時点で代休取得可能にするとかも考えられます。
あと、フレックス制度は止めた方が良いですね。一斉に出社し、一斉に退社するのは

  • お客さんに営業時間を分からせる
  • オフィスの維持費が減る
  • かえりやすい空気

など、いろいろありますし、フレックスだと全く反対の状態になることもありえます。

自主的な残業

通常自分のレベルの仕事より多くの成果を上げればプラスアルファで報いるのですが、時間を余分に使ってでも成果を上げたいことはあるでしょう。もし上司の側のニーズと一致するのであれば、時間を使う許可を与えてもよいのではないでしょうか。ただし、無制限に残業代を払ってやらせるのではなく、上積みするレベルに応じた残業可能時間を設定し、その範囲内で成果を達成してもらうようにします。このとき、増やすのは基本給と標準稼働時間です。

仕事が回らない

これじゃあ仕事が回らないって事もあると思います。そういうときはどうするか

  • より優秀な人を雇う⇒当然コストはかかります
  • 残業してもらう⇒これもコストはかかりますし、心と体の健康の問題もあります。

いずれにしても、仕事を回すためには相応のコストが必要です。

とまあつらつら書いてみたのですが、なぜこういう発想になっているかというと、結局のところ成果とは個人が個人の能力のみをもって上げるものではなくて、まず与えられた駒(仕事・人材)を適切に動かすことがベースにあってそれ以上はプラスアルファだろう、またそれを行うためにはそもそも与えられた駒が適切であることが必要だがそれは上司の責任である、という風に思っているからです。もちろん条件が適切でなくても時間的な無理をすれば、あるいは能力を通常以上に引き出す力を持っている(しかしこの場合は引き出された方は期待以上に働くわけでそちらのバランスはどうするのかが課題としてありそうです)ことで達成可能かもしれませんが、それが給料に見合うか。会社と正社員との関係が単一の仕事ごとに条件交渉をして契約するという形態のものではない以上、こういったやり方はコストの増大と能力・社員数による仕事量・成長限界が明らかになるものとなります。もちろん、よっぽどの売り物がない限りそのコスト増大は企業間競争に耐えうるものではないでしょう。
残業を適正かどうか評価し、無駄な残業を減らすよう仕事のやり方の仕組みの構築や適正な人事を行っていく責任を果たさないまま単にホワイトカラー・エグゼンプションの名の下に責任をシフトさせるやり方というのはどうもいただけません。今の仕組みを適切に運用しても残業が減らないというのは仕事の量と社員の数のバランスが合っていないからであり、そこで人を雇うのがコスト高と言っているのであれば、そこで成立させなければならないのはホワイトカラー・エグゼンプションという制度ではなく、会社の現状であり、理念であり、協力を求める姿勢ではないでしょうか。