エンプティー・チェア / ジェフリー・ディーヴァー

エンプティー・チェア〈上〉 (文春文庫) エンプティー・チェア〈下〉 (文春文庫)
表題のエンプティー・チェアはカウンセリング手法の一つらしい。作中で主人公の片割れである巡査アメリアが犯人の疑いをかけられている少年に試している。こういう描写は個人的には非常に危険だと思うけれど、効果は挙げていると思う。
さて、エンタメ精神溢れる作者は今度は主人公二人の対決構図を中心に物語を組み立てる。どっちが正しいのか、最後までわからない。おお、これは結構止まらない感があるぞ。先述のエンプティー・チェアは表題になっているわりにはそれほど重要ではなく、読者の心理を「どちらが正しいかわからない」という疑いのもとに留める効果しかないように思うし、あくまで科学的推論を中心とした筋立てだけど、動けない主人公と動く主人公の対立という構図のせいでアクションシーンの連続性が前作までよりあるし、作中時間が短いことも読みやすさに繋がっているように思える。
というわけで、やっぱり読むには面白い。でも一点、ある起こしてしまったことに対するいいわけ的に最後に明かされる真相というのが主人公たちに決して殺人犯の犯行を止められなかったことによる業以外のものを背負わせない、という意図が見えてなんかちょっとがっくり。