実名匿名論も一段落

僕としてはこの観点において言いたいことは大体言い尽くしたし、同じ観点で違う角度から見ているエントリーもいくつか眺めた上で、一旦、話としては収束したと判断し、まとめることとします。と言っても、いくつかの周辺におけるエントリについて短くコメントするのみです。
個人的な想いとしては、小倉先生とはついに論点が噛み合わなかった*1のが残念ではありますが、大体お互いの主張しているところの根本的なところが見えてきて、その差異についても明らかになりましたから、これ以上最近のやりとりにおける観点*2について、これ以上語る必然性はありません。どっちが勝ったか負けたかではなく、ある立場で何かをしようとすると、そういった主張にもなるし、それが未来への礎になりさえすれば僕は満足です。結果がどうなるかはこれからみなさんで作り上げていく未来の話です*3

小倉先生の反応について

  • もう少し勇気を持って!: la_causette
    • 勇気の問題に還元されてしまった残念なエントリ。スルー力と言っている事があまり変わりません。「現実の起こるかもしれない問題」を重要視するか、「ネット上の起こるかもしれない問題」を重要視するか。「匿名は必ず問題を起こす」的な論調で話される小倉先生としては、「確実に起きるネット上の問題」と認識されているのかも知れません。いずれにしても匿名の人を十把一絡げにして侮辱しているのはいただけませんね。
  • 「ネット上でなら加害行為をしても安心」な社会では、ネット上に積極的に実名を掲載しなくとも安心はできないのです。: la_causette
    • あとで引くえっけんさんのエントリに対する反応。「ネット上に実名を表示しなければネット上で誹謗中傷されたり悪質なデマをばらまかれたりしないで済むわけではないので、実名や住所、勤務先などの個人情報をネット上に公開しないことでは、何も解決しないように思われます。というのも、普通に社会生活を送っていれば第三者に実名や住所、勤務先等の個人情報を知られる機会はたくさんあるからです。」とあります。業務上取得した個人情報が目的外使用できない一方で、自ら公開した個人情報を悪用されるのは自己責任です。議論のパラダイムが違います。
  • 既得権を打破しようとする声に対する反発なんてそんなものでしょう。: la_causette
    • 松岡美樹さんのエントリに対する反論。「社会に無視できないほどの害悪を与えている場合、私たちはこの「既得権」とどこかで対峙せざるを得ません。」とありますが、社会が無視できない害悪であれば、無視されません(当たり前)。さてね。サイレントマジョリティーの存在を想定した文面になっていますが、それはどうか。でも松岡さんも煽りすぎですね。

その他もろもろ順不同

こんなところかな。

もう一度まとめ

なんか話がべき論になっちゃった気がするんですが、そもそもの話はメリットデメリットがあって、それを無視して片方によせる「べき」になるのはおかしいね、というだけの話じゃないかと思うのですね。ある属性が全部悪と考えるのは、あまり健全な考え方ではないと僕は思っています。
匿名のメリットを完全に捨て去ってまでも匿名のデメリットを消し去らなければならないと言うのであれば、それはそうなのかも知れません。しかし、代替として提示される実名にも、同程度の潜在的デメリットがあり、そのデメリットを超えてどうしても書きたい人だけ書けばいい、という世界を提示されたとき、「自分は匿名の卑怯者ではない」と思っている人のほとんどが「俺たちの世界を奪うな」と思うことでしょう。単にそれだけの話です。つまり、現実に照らして納得感がないだけです。
原則論としてどちらが正しいかということすら、様々な観点からの意見があり、一致を見ません。ましてや、現に今、他人を誹謗中傷したりせず、ただ楽しくブログを書いている匿名の人々を、その属性により一律切り捨てるという話がどれほど受け入れられるのか、ということです。

*1:このことは、はてなブックマーク - 「ネット上でなら加害行為をしても安心」な社会では、ネット上に積極的に実名を掲載しなくとも安心はできないのです。: la_causetteのコメントから明らかです。

*2:あくまでこの観点で。

*3:なんて言っても政府がやるんじゃないの、って言う人は選挙に行ったりパブコメに参加したりしましょう。