実名匿名論も一段落
僕としてはこの観点において言いたいことは大体言い尽くしたし、同じ観点で違う角度から見ているエントリーもいくつか眺めた上で、一旦、話としては収束したと判断し、まとめることとします。と言っても、いくつかの周辺におけるエントリについて短くコメントするのみです。
個人的な想いとしては、小倉先生とはついに論点が噛み合わなかった*1のが残念ではありますが、大体お互いの主張しているところの根本的なところが見えてきて、その差異についても明らかになりましたから、これ以上最近のやりとりにおける観点*2について、これ以上語る必然性はありません。どっちが勝ったか負けたかではなく、ある立場で何かをしようとすると、そういった主張にもなるし、それが未来への礎になりさえすれば僕は満足です。結果がどうなるかはこれからみなさんで作り上げていく未来の話です*3。
小倉先生の反応について
- もう少し勇気を持って!: la_causette
- 勇気の問題に還元されてしまった残念なエントリ。スルー力と言っている事があまり変わりません。「現実の起こるかもしれない問題」を重要視するか、「ネット上の起こるかもしれない問題」を重要視するか。「匿名は必ず問題を起こす」的な論調で話される小倉先生としては、「確実に起きるネット上の問題」と認識されているのかも知れません。いずれにしても匿名の人を十把一絡げにして侮辱しているのはいただけませんね。
- 「ネット上でなら加害行為をしても安心」な社会では、ネット上に積極的に実名を掲載しなくとも安心はできないのです。: la_causette
- 既得権を打破しようとする声に対する反発なんてそんなものでしょう。: la_causette
- 松岡美樹さんのエントリに対する反論。「社会に無視できないほどの害悪を与えている場合、私たちはこの「既得権」とどこかで対峙せざるを得ません。」とありますが、社会が無視できない害悪であれば、無視されません(当たり前)。さてね。サイレントマジョリティーの存在を想定した文面になっていますが、それはどうか。でも松岡さんも煽りすぎですね。
その他もろもろ順不同
- http://d.hatena.ne.jp/ululun/20070722/1185104953
- これ面白い。まあ、そんなコンセンサスが定着するとも思えませんけれども。
- 匿名を選んでチキンと呼ばれることもあっていい
- 相対的にチキンだから匿名である、と言う部分はありますよね。これは言い換えると処世術なわけです。決して出る杭が打たれるわけではなくね。kurokuragawaさんのブクマコメ「チキンでもブロイラーじゃなくて比内鶏と呼ばれたい」は深い。
- 匿名・実名・顕名中間まとめ
- 見え方の相違についての原則的な部分のまとめ。実名は何かを抑止し、一方で別の行為を招く。この点が、今回双方で議論されていながら平行線のため意見交換にならなかった重要な部分ですね。
- 小倉さん、印象操作はほどほどに - すちゃらかな日常 松岡美樹
- 先に触れた松岡さんのエントリ。少し勝ちを意識した無茶振り感はあるけれども。「いやあ実名でブログをやるなんて、私は真っ向から反対しますよ。だって小倉さんみたいな人が印象操作(または甚だしい誤読)をして、他人の記事や筆者の人格を貶めるんだもん。」という理由付けはいまいちですね。
- 実名なんて怖くない - 岩本隆史の日記帳(アーカイブ)
- 先のエントリでも触れました。こういう個人の感覚そのものは大事だと思うし、ネットには色々なひとがいる証左でもあります。実名向きというのはこういう人ですね。ただ、トラバをされたのであれば、単なる感想以上のものかと思ったのですが、自分はこう思う、人のことは知らない、で終わってしまったのが個人的には心残りです。
- Latest topics > 実名を公表する事のリスク - outsider reflex
- 個人的に超納得のエントリ。ここまでの議論に興味のある人必読と思われます。
- ブログ間議論の終焉、「絡み芸」の終焉 | Parsleyの「添え物は添え物らしく」
- ちょっと本題からはずれるんだけど、重要なことが書かれています。何も小倉先生に限った話ではありませんが。
- http://akamakura.jugem.jp/?eid=362
- バランスの取れた意見。実名で書いたほうが自分にとっても、社会にとっても利益になるという分野はあると思うし、それと別のプライベートで書いてもいい余地がネットにはあってもいい。
- 『勝手口』の論理 - SiroKuro Page
- 小倉先生とえっけんさんの方法論の違い。理想論と現実論。でも理想が理想に見えない。
- ネット上の加害行為は、ネット上だけにとどめておけば安心だよね。:ekken
- 現実論。このへんのやりとりでの小倉先生の発言は、ちょっと前のやりとりとはずれてきていますね。
- 茂木健一郎 クオリア日記: 情報倫理
- これ結構重要かな。決定的な何かを書きたかったらやっぱり実名(でも筆名でもいいと思うけどね。逃げ場が無ければ)である必然性というのはあるんじゃないかと思うのですね。そこまでのものが書きたくなったら僕も実名に移行すると思います。それは危険性云々の問題ではなくて。
- http://d.hatena.ne.jp/umikaji/20070722/1185110344
- 丹念なまとめ。ちょっと顕名の言葉としての使い方が微妙に思えますが、内容については概ね同意。ちょっと極端な部分もあると思います。
- 分路愚:ブログを書くにあたって、注意することがある - livedoor Blog(ブログ)
- 実名怖い体験談。そして、その過ちの取り返しが効かないのがネット世界。改名でもしない限り、一生追われる可能性がありますよね。
- http://sekai-ai.com/blog/200707/entry001061.shtml
- 実名だと何が怖いか。隣のオヤジ、と言うのは感覚的にわかりやすいですね。
- http://d.hatena.ne.jp/aozora21/20070723/1185150738
- 上記を受けた感想。周囲に気を使うことと匿名でモノをいうことの関連性。
- いつまで経っても平行線だよ - おやじまんのだめだこりゃ日記
- わりと昔から観察していた人のご意見。実名でメリットがある人は名前で商売している人だけ。
- http://d.hatena.ne.jp/rei-kotonoha/20070724/1185210627
- 別に隠しているわけじゃないけれど、書くことについて今過渡期だから、あとの始末を考えて、今は匿名、というスタンス。保険。
こんなところかな。
もう一度まとめ
なんか話がべき論になっちゃった気がするんですが、そもそもの話はメリットデメリットがあって、それを無視して片方によせる「べき」になるのはおかしいね、というだけの話じゃないかと思うのですね。ある属性が全部悪と考えるのは、あまり健全な考え方ではないと僕は思っています。
匿名のメリットを完全に捨て去ってまでも匿名のデメリットを消し去らなければならないと言うのであれば、それはそうなのかも知れません。しかし、代替として提示される実名にも、同程度の潜在的デメリットがあり、そのデメリットを超えてどうしても書きたい人だけ書けばいい、という世界を提示されたとき、「自分は匿名の卑怯者ではない」と思っている人のほとんどが「俺たちの世界を奪うな」と思うことでしょう。単にそれだけの話です。つまり、現実に照らして納得感がないだけです。
原則論としてどちらが正しいかということすら、様々な観点からの意見があり、一致を見ません。ましてや、現に今、他人を誹謗中傷したりせず、ただ楽しくブログを書いている匿名の人々を、その属性により一律切り捨てるという話がどれほど受け入れられるのか、ということです。
*1:このことは、はてなブックマーク - 「ネット上でなら加害行為をしても安心」な社会では、ネット上に積極的に実名を掲載しなくとも安心はできないのです。: la_causetteのコメントから明らかです。
*2:あくまでこの観点で。