批判をするのが目的ではないから良いのです
ちょっと繰り返しになり気味ですが、ちょっと気になる意見を見たので言及。
しかし興味深いことに、異論を唱える方々の中のどなたも匿名問題をアクチュアルな問題として扱っていないようです。
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アクチュアルとはどういうことでしょうか。そもそも匿名問題とは。僕は僕をはじめとした匿名に向けられた、半ば侮辱的ともいえる発言に対しては大変アクチュアルな問題だと認識している部分があり、それについては、ある程度透けて見えるエントリをいくつか書いたつもりです。そういう風に読んでいないのであれば、それは問題の捉え方が違っているからですね。
小倉さんが自分たちが言論の抑圧者になっていることに気付かない（ふりをする）匿名さんたちというエントリでも触れていらっしゃるように、「匿名の暴力に対して社会全体がもううんざりしている」という現実があります。
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と言うのは、アンケート調査でも取った結果でしょうか。それとも主観でしょうか。少なくとも、僕が社会全体をウンザリされるようなエントリを書いた覚えはありませんし、大部分の人はそうでしょう。そういった問題があるとすれば、それは匿名という属性ではなく、別の属性の問題なんじゃないでしょうか*1。それがみなさんが散々述べていることですよね。
アクチュアルな問題というのは、例えばこの「うんざり」感がさらに強度を増した時に、社会は一体どのような方向に向かっていく可能性があるか、またどのような方向に向かっていくべきか（そのためには具体的に何をする必要があるのか）、ということです。「現状維持派（或いはスルー力推奨派）」も結構ですが、「現状維持」を連呼するだけではこの社会全体を覆う「うんざり」感を払拭することはできないわけです。
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お、ここにさっきの答えが。でも、問題認識が違う以上、その観点をアクチュアルな問題としている人があまりいないのもむべなるかな。「うんざり感」なんて曖昧で感覚的な言葉は、同じ感覚を共有している人にしか伝わらないのではないでしょうか。僕は実名のイデオロギーのみを言い立てる人にはウンザリ感を覚えることはありますが、自分の気分を社会全体の気分であると拡大解釈しようと思うことはありませんね。
小倉さんの提案を一つ一つ否定してみせて「ほら、現状維持で問題ない筈だ」などと主張したところで実はあまり有効な批判にはなり得ません。別に小倉さんの提案は完全無欠の策ではないわけですから（そもそも完全無欠の策などあり得ないわけですが）、「完全にカバーしきれない」だの「穴がある」だの言ってみたところで、「現状維持」をあっけなく手放さざるを得ない状況下ではそんなことあまり重要ではありません。むしろ小倉さんの提案よりも有効だと思われるようなオルタナティブな策を提示することで始めて小倉さんと同じ地平に立てるというものです。
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違うんですよ。小倉先生の提案がそもそも問題あると言うことで、現状が正しいことを論証するのが目的ではありません。結構な人が、現状の問題(それって匿名それ自身が悪、ってことじゃなくて、誹謗中傷をする人がいる、ってことですよね？)に対して現実的にはどうか、理想的にはどうか、という形で様々な意見を提出していて、それが結果として「実名化しても単純に解決しないし、完全に解決しないのであれば、大きなデメリットの方にも注目したほうがよいのではないか」と言う意見に繋がっているわけです。現状維持で問題ない、というのは批判ではありません。おっしゃるとおり。でも最初からそんなことを話してはいず、「初心者に実名を勧めるのは行きすぎ」というのが批判なわけです。理由については様々な角度から詳細に示されています。現状に現実的な代案がある以上、新たな案は批判には必須ではありませんし、そもそもそれを言ったら実名だって今実名の人もいる一部で実施されている手段であり、それを広く適用するのを代案無しで批判できないとしたら、先に「全て匿名にすべし」という意見を提出したら、「実名でも匿名でもいてもいい」という反論は許されないことになります。そりゃおかしいよね。詭弁かな？
結局のところ「完全にカバーしきれない」ことを問題にしているのではなくて、別の大きな問題が新たに生まれることが致命的だと言っているだけです。
別に共通IDシステムに限らず、あらゆる情報は虚偽の可能性があるわけですから、少しでも虚偽の可能性を減らすにはどうすればよいか、という点を考える方がむしろ重要な論点となり得ます。
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確かにそのとおり。なりえます。というか、ここについては非常に重要な問題で、共通IDとか実名とか、そんな単純に解決できる問題では無いのは衆目が一致するところです。つまり、「実名であるべき」を補強することにも攻撃することにもならないのですから、この流れで論ずる必要性はありません。
システムとしては既存の技術を援用すればよいわけですし、本人確認を行う手間にしても、携帯電話不正利用防止法における契約者の本人確認の義務付けのことを思い出してみればそんなに非現実的な話ではありません
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その既存の技術の援用とやらを具体的に提案してもらいたいものです。僕は技術屋として、今まで提出された様々な問題を解決するシステムを簡単に構築することはできないという見解を持っています。なお、携帯端末は端末がキャリアからコントローラブルであるから可能なのであって、また、端末IDそのものが個人と一対一ではないことが大きいのです。
現にお隣の韓国ではあっさり実名登録制度はみんなに受け入れられたわけです。日本においても「匿名の暴力に対して社会全体がもううんざりしている」という現状であることを考慮すれば、多くのネットユーザーが実名登録制度を受け入れる可能性は十分あります。
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韓国といえばこの事件が象徴していますね⇒テクノロジー : 日経電子版
そして、本当の実名制が言葉の暴力を抑制するかについてはまだ結果が出ていません。また、実名制によってどのくらいネットの言論が抑制されるかも。少なくとも日本の日記的使い方にはそれなりのダメージがあると予想されますが。
繰り返しになりますが、「匿名の暴力に対して社会全体がもううんざりしている」という現状というのは共通認識という前提ですが、そんなことはありません。
小倉さんという方はブログ界の中でもグランドデザインを語ることのできる数少ない一人であって（そうそうグランドデザインなど語れるものではない）、そういう希有な存在に太刀打ちするのはなかなか大変なことだと思います。
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「実名にすれば全て解決！」というのがグランドデザインとは思えませんし、共通IDだってアイディアの域を出るものではありません。グランドデザインって「月への軌道エレベータを作れば移住できるね」みたいな現時点での技術やアイディアにおいて夢物語であることを語ることではありませんよね。
かつて数々のコメンテイターが小倉さんの前で空回りしていたのも、結局は誰も小倉さんのデザインを凌駕するデザインを提示できなかったからだと言えるでしょう。
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ある程度十分機能しているものを再デザインする必要性はなく、ただ、改善すべき点があるということについての共通認識があるだけです。だから、その改善すべき点と、既存のわりと大勢の人が必要としている機能はトレードオフでしかない、という言説に違和感や抵抗を感じているし、他の道を模索したくなるし、そのそもその改善すべき点は、その改修によっては改善されないんじゃないか、という疑問が提示されたりもするわけです。
*1:でなければ、実名でうんざいりさせる言論があったら実名も全てダメ、ということになりますし、実際にうんざりすることを書く人がいろんなところにいます
