なんでも匿名さん

どんなにもっともで正しそうなことを言っても、決め台詞が全部「匿名さんの〜」では説得力が皆無です。

光市母子殺害事件における上告審以降の弁護人の弁護方針に対するネットの匿名さんの批判の声がやみません。しかし、現行法の下においては、弁護人は被害者やその遺族の感情ないしそれらを被告人の手続的権利や当事者対立構造による実体的真実の追究等の諸理念より重視する「世間の風」を最優先して活動することは許されていません。結局のところ、匿名さんの要求は、憲法の改正まで視野に入れた立法論といわざるを得ません。

被害者の感情を損ねない刑事弁護: la_causette

批判の声も止まないけれど、理解の声も増えてきているという現状は全く無視。実名で非難する人も匿名で擁護する人もいるのに特定のアングルで語ろうとする意図はとてもじゃないけどこの問題を真剣に考えているようには思えません。匿名を非難するための材料にしかしていない。
大体、懲戒請求だって実名の声なわけじゃないですか。そもそも論として、世間の風というのは匿名の集合かも知れないけれど、民主主義という大義名分の大元なんだから、もし、仮に憲法の改正まで視野に入れた立法論が日本人の大多数が求めるものであれば、変わらざるを得ないものです。日本は法に支配されているのではなくて、法を決める人民に支配されているという基本的な事実を忘れないようにして欲しいものです。法曹界の役目は、あくまで「現行の法」に則った運用を行うことであって、もちろん法として正しくあるべきは何かというのを啓蒙する権利はあれど、世間の風を馬鹿にして良いわけでもないのです。こうやって弁護士が、自分のほうが上であることをアピールすればするほど、法改正に傾くのですよ。飲酒運転の話がいい例です。あれだってそんなにいい法律じゃないよね。
その前提の上で議論しているのであれば、とてもじゃないけど、「匿名の〜」が決め台詞になるなんてありえないと思うんだけどね。