すき屋とバイトと請負契約

2chまとめ経由で知ったんだけど、すごいことやってるのね。

「『アルバイト』と称する者らの業務実態を精査した結果、『アルバイト』の業務遂行状況は、およそ労働契約と評価することはできないことが判明した」「会社とアルバイトとの関係は、労働契約関係ではなく、請負契約に類似する業務委託契約である」――。つまり「すき家」のアルバイトは会社に雇用されているのではなく、個人事業主として業務委託契約を結んだ個人請負だというのだ。

個人請負という名の過酷な”偽装雇用”(1)

一体全体、どういう契約を交わしているのか。請負契約は、対象となる仕事の完成を目的とし、仕事の完成を達成することによって報酬を受け取る契約ですから、そこに予め規定されていること以外は一切やる必要がありませんし、指示をすることも出来ません。

① アルバイトは勤務シフト表を自分たちで作成し、会社の業務指示で業務をしていない。だからこれは請負契約に類似する業務委託契約であって、雇用契約ではない。
② アルバイトの勤務日や時間帯は、アルバイトの自由裁量で会社の指示がない。すべてアルバイトの裁量である。
③ 請負契約に類似する業務委託契約であり、残業代が発生するという前提を欠いている。

首都圏青年ユニオン | すき家で働くみなさんへ

以上がすき屋(ゼンショー)側の見解のようですが、類似するって何だ?
ちなみに、請負だと下請けさせられますから、友だち連れてきて勝手にシフトに入れても文句言えません。そういうのまで含めて、業務指示をしないと言えますね。どういう契約をしているかわからないからなんともいえませんが、請け負う業務の内容として、肉の量とかそういうのが契約に書かれてなかったらテラ豚丼出しても文句言えません(それで足りなくなった肉は他の人のを減らせばOK)し、手順を守らなくても目的が達成できるなら、違う作り方をしても構いません(契約外の作業指示や直接指導は出来ないから)。
まあ、この辺は契約書みないとなんともいえないわけね。
一番の問題は、残業代って話で、確かに業務委託なら残業代は発生しません。その代わり、シフト表を自分達っていうけど働く時間はあくまで個々人が勝手に決めていいのですから、複数の個人請負をまとめて「穴を開けないように」という指示は当然出来ませんし、契約も出来ないはず。また、時給で払うことは出来ませんから、サボってシフトを減らしても全額払わなければならないし、売上目標なんてのは当然契約に盛り込めないでしょう。最低何時間出ること、みたいなのは業務委託なら可能だと思いますが、その場合、残業が発生したときの清算(もちろんなしにも出来る)をきちんと決めておかなければなりません(法的にどうかは知らないけど、普通契約に含めるんじゃないかな)。
業務委託ってのは勤務日や時間帯だけ自由裁量というではダメで、以下にあげるような条件に全て当てはまらないといけません。

  1. 仕事の依頼、業務従事の指示に対する諾否の自由があるか
  2. 業務の遂行方法及び内容に指揮命令が及んでいないか
  3. 通常予定されている仕事以外に従事することはないか
  4. 労働時間管理など拘束性がないか
  5. 本人に代わって他の者が業務を行うことを認めているか
  6. 報酬の計算単価が時間給や日給といった時間を元にしていないか
  7. 本人が所有する機械・器具の使用を認めているか

などが、労働者性の有無を判断する基準になります。他にも裁判例では

  1. 採用・委託などの選考過程が正規従業員とほぼ同じであること
  2. 報酬について給与所得としての源泉徴収をおこなっていること
  3. 労働保険の適用対象としていること
  4. 服務規律を適用していること(就業規則の遵守を求めていること)
  5. 退職金制度など福利厚生制度を適用していること

などがあった場合は、労働者性を肯定する補強事由を有するものとしています。

労働問題Q&A−業務委託契約・請負契約−

【業務委託社員か労働者かの判断基準】
次の9つの質問にすべて「はい」と答える場合には、使用従属性がなく、業務委託社員と判断されます。「労働基準法研究会報告」(85年報告)による。
Q1 仕事の依頼や業務従事の指示を断ることができる。
Q2 仕事を進める上で、具体的な内容や方法の指示はない。
Q3 進捗状況の報告義務や勤務時間の管理はない。
Q4 代わりの者に業務を行わせることができる。
Q5 報酬が、時間・日・月を単位とする労務ではなく、業務の成果に関して支払われている。
Q6 会社は機械、器具の負担はしていない。
Q7 報酬は機械等を負担するため、他の一般社員よりも高い。
Q8 報酬に生活給的な要素はない。
Q9 他の会社の業務を行ってもよい。

業務委託契約・業務委託社員大阪労務管理事務所

請負と業務委託ってのも実はちょっと違って、実際に民法上業務委託ってのはないのですが、大体委任または準委任と見做されます(委任は法律行為を行うことを指します)。請負は予め定めた成果物(つまり目的)の完了を持って報酬を受け取りますが、委任は仕事の完成を目的としません。
まあ、この辺は正直専門家でないからよくわかりません。僕としては紹介に留めたいと思います。
ただ、まあ今回の件については上に挙げたような基準から行くと、明らかに請負とは言い難いと思います。