収穫祭 / 西澤保彦

西澤保彦は僕にミステリーの地平を与えてくれた恩人の一人なのです。友人に勧められて新本格を読んでみたものの、イマイチ乗り切れなかったのですが、大学の卒業間際に読まされた森博嗣経由で読んだ西澤保彦がど真ん中ストライク、それ以来ずっと追いかけてはいるんですが…
志向としてははっきり「パズラー」と言える西澤氏ですが、初期のSFチックなガジェット(は未だにシリーズとして続いていますが)に変わって、過剰なまでの倒錯した性というテーマが目立ってきているのがここ最近。正直過剰すぎにも思えます。思えば「黄金色の祈り」くらいからかなあ、そういうの。何かを吹っ切ったかのようにダークな作品だったような。

黄金色の祈り 文春文庫

黄金色の祈り 文春文庫

そして、今度はどうもサイコさん…
収穫祭

収穫祭

辺鄙な村で起きた大量殺人事件。当時少年少女として生き残った者たちが、風化した記憶の中で事件の真相を暴く、というとまともそうですが、事件の謎をある一点に帰結させつつも、気がついたら話は別物になっていると言う…ちょっと無理やり感がある展開ですが、きっと映画にすると構成に残るB級ホラーになると思う。そのことを作中で言及されるB級SF映画は暗示しているのです!(絶対違
どうも最近あっち側に行ってしまいそうな先生が心配でなりません。
しかしあれですね、最後の最後で、このタイトルの意味に気付いたときに背筋がゾクッと来るのは、人間という存在は案外そういうものなのかなという感触のなせる業なのかもしれませんね。