就職活動中のみなさんに贈るシステムインテグレーター入門(その1)

就職難といわれる今日この頃です。高校の部活のOB会で就職支援活動を去年あたりからはじめています。にしても、IT業界がなにをやっているかはやっぱりみなさんイメージしにくいみたいですね。でも、会社選びにはその仕事が自分のしたい仕事のイメージと合る程度かみ合っているかは大事なことです。
そこで、僕の所属する業界である、いわゆるSIerとはなにものかというのを説明しようと試みてみます。あくまで僕が見聞きした範囲を、簡単に説明するという趣旨なので、会社による差異などで説明できないことは沢山あります。そこはご容赦いただくとして。

自己紹介

某独立系(ユーザー企業の子会社だったりIT系メーカーの子会社だったりしないことを意味します)システムインテグレーターに勤めて12年、銀行システム一筋(たまたまですが)でやっています。会社(の金融部門)としてはホストが得意だけど僕は数少ないオープン系部隊。

そもそも、ITとはなにか

パソコンの普及やインターネットの発達に伴ってこの業界の構図はだいぶ変わってきました。なので、前段としてITについて主にシステムという点から簡単に。
元々コンピューターは計算機として開発されています。人間には複雑な弾道計算とか(戦争の道具ですね)。なので、比較的早期にコンピューターを導入したのは正確で迅速な計算を必要とする金融業界です。
企業活動の中で事務作業の占める割合は高いです。中でも計算を伴うものはソロバン大国日本をもってしても負担です。計算という行為そのものはこれもコンピューターといってよい電卓によって負荷軽減されたものの、事務作業はなくなりません。では作業プロセスそのものを自動化したらどうでしょう。その時間に人間にしかできないことを出来るようになりますね。このように、人間がしている作業を自動化するコンピューターシステムを作っていくのがシステムインテグレーターの仕事です。ITの歴史(の一部)は事務作業の自動化の歴史です。
さて、自動化することにより、業務の効率化、スピードアップが可能になりましたがそれだけではもったいない。人手ではやりづらいことをスピーディーにやらせることができれば、競争力のあるサービスを提供することができます。24時間受付できたり、お客さんの過去の履歴が瞬時にみれたり。つまり、コンピューターシステムによって新たな付加価値を生み出すことができるようになります。これが企業システムの次なるステップです。
さらに、そこで集まった情報を企業戦略やマーケティングに利用するようになってきました。ここに至ってコンピューターシステムは作業効率化、自動化の枠を飛び越え、企業活動の意志決定をも左右する最重要な存在になりました。
もはや、大半の企業活動はシステムを前提とした業務プロセスを抜きには成立しません。このように重要な存在の構築、保守の支援をするのが僕たちシステムインテグレーターの重要な役割です。

楽天はIT企業か

この章の最後として、少し議論をしてみたいと思います。
みなさんごぞんじネット通販の雄、楽天。創設者は日本興業銀行(今のみずほコーポレート銀行)出身です。
さて、みなさんは楽天をIT企業だと思いますか?



楽天はネットを使った「通販業者」という風に見えます。しかし、楽天の仕組みは自分自身が通販で商売をするのではなく、楽天というネット上のショッピングモールを提供しているのです。その仕組みを自社で作っていることを理由とするならば、IT企業といってよいでしょうね。
しかし、楽天の業務の核の部分は加盟店を集め、利用料を取るという営業の部分ですね。そういう見方からいうと楽天はITを有効活用している会社に過ぎません(もちろんもう少し掘り探ると違う部分も見えて来ますがここでは単純化しておきます)。

IT企業とはなにか、という定義はきちんと決められているものではありません。楽天のようにITを活用したサービスを提供するものがあったり、企業システムを作るものがあったり、あるいはみなさんが使うスマートフォンのアプリを作るものがあったり。
ITを仕事にしたい場合に会社選びで重要なのは、どのような形でITと関わりたいかを決めることです。システムを作るつもりで入ったらいつの間にか倉庫の管理をしていたり、顧客営業で駆けずり回っていた、ということになりかねません。
見るべきはITを使っているかどうかではなく、その会社の収益の源がITシステムを作ることそのものであるか否かなのです。


(続く)