クラウドに誘われて

ファーストサーバーのデータ消失事件については雨後の筍の如くエントリが乱立しているので直接の言及は控えようと思う。さっくりとしたまとめとしてはファーストサーバ社の障害に関して - naoyaのはてなダイアリーが大事な点を押さえていると思う。

さて、単なるバズワードから昇格して一般的な地位を築いたクラウドだけど、その実態はそんなものだ。当初からクラウドの名を借りた単なるレンタルサーバは多かったものだけど、クラウドが宣伝文句として安心安全的なことを前面に出していたことは不誠実な場合が多かったんだろうなという印象。普通に考えて、集中管理になにか重大な問題が出たらにっちもさっちもいかないだろうし、SLAが高いサービスはそうならないために多大なコストをかけている。逆に言うと、安いクラウドは早い安いが信条であり安心安全は二の次なのである、という真実。

もちろん、エンジニアはそれを理解している。クラウドだから障害に強いという思い込みはないだろうし、万が一に備えた(それはその鯖屋が潰れる、あるいは法的な問題で移設が必要になるということも想定される)対策をきちんと考えていくものだ。一般にリソースを完全に使い果たすようなシステムを構築する場合において、外部のクラウドを利用するのはイニシャルコストの削減にはなるけどトータルコストは大きくなるだろう。外部のクラウド利用は運用、管理のコスト削減のための銀の弾丸では全然ない。

ところが、経営層はそのへんを理解していないことが多い。結果として、コスト削減ができますよ、とか自社でダウンタイム0のシステム作るよりも楽ですよ、とかにつられちゃう。もちろん、一面的にはそれは正しいのだけど、じゃあシステム部門はお役御免だよね、と思っちゃったらもうアウト。そこに何かへの割り切りが発生しているということを把握し、対策できていないと、重大な問題が生じた際に何をすべきかということがわからなくなってしまう。

ファーストサーバーのお陰でクラウドデメリットが説明しやすくなったので、犠牲者には悪いがありがたい、と思っているエンジニアが結構いるんじゃないだろうか。