今さんのid:pha叩き記事がようやく来たと思ったらどうにも煮え切らない前編のみだった罠

あれだけネット民(はてな民?)を煽って煽ってようやく登場したと思ったら前編だけでした。しかもかなり煮え切らない内容…
乗りかかった船みたいなものなので、言及しておこうと思う。

クラウドファンディングは、切実な社会問題を解決したいとか、楽しいアートを作りたいなど「みんなのために」活動したい志を持つものの、自助努力だけではどうしても困難な際に利用できる便利な仕組みだ。

自称ニートがネットで"生活費集め"はOKか!? (前編) | ビジネスジャーナル

phaさんにも指摘されていた、定義の狭さをここでも採用しています。印象操作をして、これから先に書くことがいかにこの定義に当てはまらない悪いことであるかを強調しようとするテクニックですね。
新しい言葉なので、wikipediaに書かれている定義でとりあえず十分かと思うので引用すると

クラウドファンディングは、不特定多数の人から資金を集める行為である。群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語で、製品開発やイベントの開催、チャリティなどの用途で利用されることが多い。ソーシャルファンディングとも呼ばれる。

クラウドファンディング - Wikipedia

というわけで、「みんなのため」なんていうニュアンスは少なくとも表面上は一切ありませんですよね。これを大前提にしてこの先を見て行きましょう。

ここで、このプロジェクト内容の信憑性や妥当性について、主に2つの大きな疑問が生じる。

 ひとつは、phaさんが「ニート」と自称していた点。

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おおっと、信憑性や妥当性と来ましたね。そして大きな疑問と。それが「肩書き」の詐称であると。一般的に言ってニートは無職の婉曲表現であることが多いですが、phaさんの場合はどうかと。そういうことかな?

彼のプロジェクトのページには、病気や障害などの働けない事情は紹介されていない。それどころか、「制作作業が終わったらなにがしかのバイトなどをしてお金を稼ぐことも考えている」と明かしている。彼には働けないほど切実な事情はないのだ。

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ええっ?ニートってさ、「働いたら負けだと思ってる(AA略」のことでしょ?働けないほどの切実な理由がないけど働かないんでしょ?この説明だとまさにphaはニート!って言っているようなものじゃない。

phaさんは仕事をしたくない自営業者であり、ニートでないことは彼自身も、筆者の質問に対して、自分のブログで「確かにその通り」と認めているのだ。

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はい。ニートじゃありませんでした!不誠実だ!詐欺だ!
でもさ、phaさんの募集って「僕のニート生活を助けて」だったっけ…

こんにちは、pha(ファ)と言います。33歳男、定職には就いておらず、毎日ぶらぶらと貧乏生活をしています。よくブログ(http://d.hatena.ne.jp/pha/)で「ニートについて」とか「働くことについて」などのトピックについて記事を書いていたんですが、そうしたらそのテーマで本を出さないかというオファーをいただき、今「ニートのススメ - お金がなくても楽しく生きるためのインターネット活用法(仮タイトル)」という本の原稿を書いているところです。

ニートについての本を書いてるんですが制作費が欲しいです。 - CAMPFIRE (キャンプファイヤー)

うーん、このプロジェクト、phaさんがニートという生き方を貫くため、働いて収入を得てはいけない、だから金をくれ、というプロジェクトでも何でもないよね。ニートという属性によって金を集めているわけではない。なので、ニートを自称することとこのプロジェクトでお金を集めることは全く関係ないのではないか?

なんだかツッコミ対象についても、ツッコミ内容についても、結論についてもとにかく脈絡がない感じがしてきましたよ?

2つ目の疑問は、phaさんが求めたのは「制作費」なのかという点だ。彼は、集めた資金の使い道をこう説明している。

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あらら…ニートを自称していて実態がそうでもないんじゃない、という部分に潜む問題点を指摘する前に次に行っちゃいましたね…
この点については僕の以前のエントリでもまるっと指摘した通りなのでそれを見てもらうとして。

彼のプロジェクトを正確に表現するなら、「自営業者ですが、仕事をするのがだるいので貧乏になりました。とりあえず1カ月分の生活費が欲しいです」になる。

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指摘されている部分についてはあながち間違いではない。ところが、これだけだと大きな問題がある。実際にこのプロジェクトにコミットすると、phaさんそこで得た資金を生活の糧にしながら本を書くことができるし、支援者はphaさんの書いた本がもらえるのだ。単に生活費として費やされるだけではない。なので、プロジェクトを正確に表現していない。むしろ大事なところをばっさりカットしている。これはアンフェアな表現ではないか?

バイトのような自助努力を後回しにし、他人が働いて得た金を当てにする。それは彼の自由だ。だが、「制作費」を無制限に拡大解釈するプロジェクトが承認された今、食えないクリエイターが制作費として生活費を求める案件を拒む理屈が立たない。

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まず、ここに重大な誤解というか意図的な曲解があるように思えるんだけど、そもそも、拒む理屈が立たない以前に拒む理屈なんて誰も言っていない。ザ・藁人形な案件になってきました。
でね、さっき指摘したとおりなんだけど、生活費を求める=それを制作の糧にしないで食いつぶしていいなんてことは誰も言っていないわけ。ようは、phaさんが本を書く、ということを支援していて、それが実質生活費であってもそれで本が出たらいいわけじゃない。「制作費」を無制限に拡大解釈、という言葉自体も印象操作そのものにしか思えませんよね。

すると、「ニート」を自称したり、特定個人の生活費にのみ資するプロジェクトを承認した審査基準の正当性を説明する社会的責任が、運営者には生じるのではないか?

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どうも理路が立っていない議論になってきた気がし始めましたが、そもそも冒頭で指摘したように「ニートである」ということの価値が案件にとって重大な要素であるかというと否どころかまったく関係ないわけですね。どっかの「学費が足りなくて助けて」の話とはわけが違うのです。「ニートの資格が失われちゃう!助けて!」なんていうプロジェクトであると解釈する人がいたらその人の言語能力には重大な疑義があります。そうじゃないよね。
また、特定個人の生活費に「のみ」資するプロジェクトという解釈には無理があるように思えます。例えばこれが「出版社が作家に当面の生活費として印税の先渡しをする」という行為であれば社会通念上問題があるのでしょうか。そんなことないよね。本を書くために当面の生活費を募り、その見返りとして完成した本を提供する、はそれと同種の行為にあたるんじゃない?前のエントリにも書いた通り、たとえば映画制作のファンド化で提供された資金を俳優やスタッフのアゴアシ代にしたら批判されるとか一般的に言って考えづらいですよね?

ここまでの今さんの批判って、あくまで単に「生活費よこせ」が今回の案件の本質である、という前提に立っていると思うんだけど、その前提というのはものすごく主観的、曲解的な解釈であるようにしか見えません。

その責任を放置すれば、「働けない事情はないけど、働きたくない」という反・良識的なプロジェクトの起案者を矢面に立たせて面白がるだけだ。それは、クラウドファンディング業界が築き上げてきたサービスの社会的価値を貶めることにもなりかねない。

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これ爆笑するところですか?クラウドファンディング「業界」?「サービスの社会的価値」?勝手に業界作ってそれを代弁してみるとかどんだけ藁人形好きなんですかね?

さて、ここで大事なことを述べておきます。
「生活費よこせ」プロジェクトがそもそも問題かどうか。先の言葉で言うと「食えないクリエイターが制作費として生活費を求める案件」が立っても良いかどうか。いいに決まってるじゃないか。
もとより、ファンディングが成功することは保証されていません。単に生活費よこせであれば1銭たりとも集まらないことのほうが多いでしょう。クラウドファンディングは、食えなくなった人が社会から金をむしり取るための仕組みには成り得ないのだよ。
phaさんのこれが案件として成り立ったのはなぜか。phaさんというウェブタレント(といってもよいでしょう)が本を書くという目的を提示して金を集めたからにほかなりません。ここで僕が「今までのエントリをリライトして書籍化したいけど自分の金を使うのもったいないからみんなお金出して。自分の財布は美味しいものを食べるのに使います」という案件を出したとして、果たしてお金が集まるかどうか。
ここで行われたのは、phaさんが自分の商品価値をマネタイズした、というしごく一般的に行われている出来事なんですよ。食い詰めたクリエーターがアウトプットもせずにお金を集められると思うなんてのは誤解も甚だしい。一方その人が過去に実績を見せており、そこで支援することで次の実績が得られることが目に見えているのであれば、お金を出す人はいるでしょう。そして、そのプロジェクトが失敗することについても文句は言われないでしょう(元々成功を保証していない限り)。ただ、そこで「何もしてません。使い果たしました」となったら当然詐欺だのなんだの言われるし、二度とお金は得られない。
もっとも、昔から食い詰めて出版社にたかって結局何もしない作家とかって結構いたはずです。それに比べたらphaさんのほうがだいぶマシですよ?

これも大事なことだから繰り返し言っておくと、phaさんに商品価値がなくなったら、この仕組みでは金が集まらないのです。なので、これは本質的に社会からの搾取行為には成り得ない。僕がphaさんの生き方に共感しないにもかかわらずこのプロジェクトを擁護するのはその点が大きいのです。マネタイズするものがなくなって野垂れ死んでもしらん、ということです。

もう一度あえて言っておくと、studygiftとの違いは、目的に疑義がない、肩書きは案件の本質ではない、というところです。そして、studygiftは社会的意義という餌で支援の動機づけをしながらも、実際にはタレントとしてのマネタイズを行なっていた、という構造自体が非難の的になっているのです。その点、本案件にはそういった欺瞞は発生していません。あ、生活費よこせはけしからんと的はずれな批判はされているけど。

というわけで、以前予想した通りというか以前書いたことを再度書くだけのエントリになってしまったような気がしてきましたが、そういうことです。

では、CAMPFIREは、どんな基準で新規プロジェクトを審査・承認しているのか?

 そこで、CAMPFIREの運営元であるハイパーインターネッツ(東京都港区六本木)に、「どのような形で新規プロジェクト案を打診してくる団体や個人の実情を把握・確認していますか?」「今後、心身ともに健康で、働けない切実な事情を持たず、単純に『だるいから働きたくない』という人が本を書きたいというプロジェクトを打診してきても受け入れていく方針ですか?」など、複数の質問をメールで送ってみた......。

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おお、本案件の受け入れ先にして、詐欺的学生支援studygiftの元締めにして、社会的意義よりスピードてへぺろ(ゝω・)、なアレじゃないですか。今さんの話はどうでもいいけど、この人達がどういう回答をしてくるかにwktkが止まりません!後編に続く!