実経験という「壁」

某ネットプロレスを眺めて楽しむ。役者が違うよなあと思う。というか、当事者一方はプロレスと思っていない。でも、相撲取りが子供に押し出されて上げるほど優しくないのでコブラツイストでロープ、サソリ固めでロープと来たところにそろそろ投げっぱなしジャーマンで受け身取れず死亡という事故が待っているように思えてなりません。

それにつけても、見ていて思うのは、「段取り能力」の差異。そりゃ一方は実務バリバリの起業家で、一方は夢を垂れ流すのが仕事の虚業家なんだからそりゃマッチメイクが間違っているよなと思わなくもないけれども、大体の虚業家は段取り能力だけは素晴らしくてマメにセッティングできるから回っているということが多いので、それすらできないと人間関係貯金の終焉とともに人生も終焉、というのが既定路線なんだと思うんだよなあ。合掌。

階層社会、あるいは正規雇用と非正規雇用の格差において一番問題かなと思うのは、やはり実務を経験することの壁なんだと思うんですよね。システム屋やっているとしばしば思うのは、「この業務、2週間でいいから実地で経験したい」ということ。多分、2週間顧客と角突き合わせて打ち合わせにこもるよりも、2週間実体験することのほうがよりためになる。それでも、正社員として必要な社内の業務なんてのをやっているとピンとくることが結構あったりする。
一般的な業務において一般事務・雑用以外の仕事って会社に勤めてないと経験できないことって多いし、正規・非正規でも体験できることに大きな違いがある。一度業務経験を持ってからその道でフリーでやっていくことはできると思うんだけど、そうでないと難しいものは結構ある。そういう意味では、正規雇用流動性を上げることは企業にとっては一見教育コスト増かもしれないけど、困ったときに実能力のある人のパイを増やせるということでもあるし、そういうサイクルが成立してしまえば正社員の解雇が容易になっても就職も容易になるよなあと考えるわけですな。
ただ、そのためにはたまに主張されるような「解雇規制が足かせ」みたいな考え方を先に立たせていてはできない。むしろ、別のところ(例えば教育や一時的な雇用増負担、期間正社員の報酬増額)にコストをかける覚悟をして人材を流動化させても肝心のやってくれる人がそっぽを向かないサイクルをつくり上げることが大事なんだと思うんだよね。規制緩和だけを主張しても結果として先細り。

にしても、せっかく何がしか能力を身につけるチャンスを得たのにほっぽり出して自分の力で生きていくことを選択した人が実務能力の無さを自ら開陳していくというのが見世物でなかったら何なんだろうかと思いながら、僅差で勝つことを魅せるのか、圧倒的な力を魅せつけるのか、事故が起きるのか、というあたりをワクワクして眺められる日を心待ちにしているのであります。