三国志10 / 北方謙三

三国志〈10の巻〉帝座の星
中心人物がだいぶ少なくなってきて、物語が加速していきます。生き様から死に様にシフトしてきたと言うか。前巻の最後でついに関羽が死を迎えます。そうすると普通、劉備張飛とが周囲の制止を聞かず弔い合戦に突入していくわけですが、ここでは怒りと悲しみを押さえつけて、感情だけではなく、現実的にも戦略として成立させた上で呉に攻め込もうとする姿が描かれています。完全には入り込めない趙雲がちょっと可哀想。一方で曹操は孤独感を抱いたまま死んで行きます。呉では暗い陰謀が画策されます。ラストに向けてだんだんトーンが暗くなってきました。
張飛の死に方には賛否両論あろうかと思いますが、ただ酔っ払って部下に寝首を掻かれるよりはよっぽどよいですね。ここまでの性格設定に対してあまり矛盾が無いというか、最初からこういう死に方を与えるための性格設定だったようにも思われます。