サービス残業って何をサービスしているんだろう

ふと思ったので。裁量労働制を初めとした成果主義の皮を被った残業代抑止策で必ず引き合いに出されるサービス残業。言葉自体は、残業代を初めとした労働の対価を伴わない仕事を行うこと。一つには、実働時間ではなく、アウトプットに対して対価を払うと言う建前。もう一つは、残業を「なかったことにすること」。後者が違法だから前者にしてしまえと言うのがもっとも安直かつ労働者に対して配慮のない施策ですね。
いずれにしても、労働者が、会社に対して「無償で働く」というサービスをしているわけです。サービスってなんか対価を伴いそうな名前ですが、ボーナス残業とかエクストラ残業とかそんな名前だとより一層対価が得られそうだから妥当なところか。いや、いっそのこと「無賃金残業」あたりの直接的な表現に変えるべきかも知れない。
いずれにしても後者のサービス残業は違法でありますが、これもピンきりで、経営者による搾取の構造であったりする対極に会社の生き残りをかけた必死な争いがあったりするだろうからなんともいえない。
裁量労働というのは、裁量の度合いや成果が定量的に量れないと「そもそもの対価」が適当であるかがわからないことが多いのが問題です。大抵は一部がインセンティブになっていたりすると思いますが、そこがマイナスに変動したとき、元々の想定に見合ったものになっていなかったらそれは成果以前にベースとして求められている部分の対価が最初から足りなかったことになります。裁量労働は給与を支給する形態ではなくて、労働条件を合意し契約するものであるのが本来でしょう。つまり、仕事の内容と労働時間について契約外の状態は追加で何かが発生するべき。だから、いわゆるサラリーマンとして社員を扱いたかったら導入するもんじゃない。実際には待遇について是非を言うことを許されないサラリーマンとして、残業代抑止を主目的に導入されているケースばかりですが。もともと残業代があったものが例えばWEの導入などによってなくなる場合、想定標準残業時間を年俸に折込、それを超えた場合は支給するなりすればまだよいのですが。
さて、サービス残業。サービスという言葉の主体はあくまで労働する側にあります。サービス残業が成立するのはサービスをする意思がある場合、つまり、働いたら成果が得られるとか、ここで頑張らないとこの仕事がダメになってそうすると会社が潰れて自分が困るとか*1、仕事が楽しくて楽しくて、それ自体が会社から得られたインセンティブであると思って仕事しているとか、いずれにしても、自分の意思でサービスしている場合に限られる*2はずですよね。
自由意志かどうかを本人の主観以外で判断するのは難しいから、一律括るしかないのでしょうけれども、強制された無報酬の残業は「サービス」なんかじゃないことを上手くアピールしていけないものでしょうかね。

*1:このケースはダメなケースもあるけれども

*2:命令に納得している場合も含めて