生首に聞いてみろ / 法月 綸太郎

生首に聞いてみろ

生首に聞いてみろ

構想15年らしい。うーん。
トリックの背景について、説得力のある描写をしようとするあまり、かえってその理解し難い情熱的な部分が浮いて見えてしまうし、小説としてのプロットがそこに支えられてしまっているのも弱点に思える。
でも、これはこれでいいんじゃないかな。トリック自体にしても、伏線が音を立てて収束していく様も、最後に明らかになるものも、パズルとして構築されたミステリに相応しい。法月綸太郎自身が「新本格はこれでいい」という確信を持って書いてくれれば、もっと良いものになったかも知れない。でも、売れないかも知れない。うーむ。
様々な問題を解決する手段として幻想やSFに走る本格は、それはそれで一つの形なのだと思うけれど、こうやって真っ向から勝負することをもうちょっと肯定しても良いんじゃないかと思う。ただ、遺して行く何かがないと消費されて終わってしまうから、ジャンルとしてはやっぱり難しいですね。