理想の働かせ方と現実のギャップ

僕は上手く文章にし損ねたんだけど、id:yellowbellさんがとてもわかりやすいエントリで示してくれたので、まず紹介したい。http://d.hatena.ne.jp/yellowbell/20070915
「えー、そんなの無理に決まってるじゃん」と思う向きもあると思います。でも、ここでは逆説的に、「どうせそんな職場ないから無理」と言っているように捉えることも出来ます。その帰結として「本当は、働かせ方の問題」という結論に達していて、非常にシンプルです。実際、WCを働かせ方の問題と捉えることの出来る会社は少ないでしょうし、実は、そのような意識が持てる会社は既に不要な残業などあまり無いと思われるのですよね。それもまた、この法案が反発されてばかりの原因なんじゃないかと思っています。あとは、業種による差異。遅延することがクリティカルな影響がある業務において、あるいは価格競争が激しい業界においては、人の労働の価値も等しくダンピングされがちですが、労働の価値が下がったことを直接月給には反映しづらいので、仕事量を増やしてその分をカバーするしかなかったりしますね。
さて、僕のブクマのリクエストにお答えいただいて、想定外の事態への対処の話を書いていただきました。ありがとうございます。ただ、ここについては理想と
現実のギャップが大きいと思うので、ちょっと補足してみようかと思います。もっとも、yellowbellさん自身、理想論として書いていますから、蛇足ではあるのですが。

そして、そのミーティングでその目標変更の要因をチェックし、その要因となった部下は成果査定をフェイル=マイナスに、その要因をカバーする目標を新たに請け負った部下には、その目標をクリアすることでプラス以上の結果になるボーナスチャンスを与えます。もちろん、フェイルした部下にも、リカバリするという新しい目標ができるわけですから、職場では無限に成果を摘むチャンスが生まれることになります。

http://d.hatena.ne.jp/yellowbell/20070915

多分、ここが一番難しいところです。査定をマイナスにする、と言っても会社員である以上、限界があります*1。一方で、プラスにすることも、仕事の成果全体が増えるわけではないので、マイナス分以上にはなりません。また、管理者がマネジメントに失敗した場合、それによってプロジェクトが失敗しても良いかどうかということもあります。管理者が悪いから作業者には罪は無い、だから君たちは成果分全部報酬出すからね、なんてことはありえませんよね。なので、負のインセンティブを得ないために、本来不要な作業をやる必要が出てくるかもしれません。
もともと、人件費というのはこういう部分の見込みも含めて予算が立っているのですが、完全に目標合意でしぱられた人件費においてはどうでしょう。
といいつつ、僕の話にもちょっと無理があります。残業代も無限に湧いて出てくるものではありません。会社全体のどこかがダメージを受けているわけですから、そういう意味では、WEにおいて、見込み残業分を全員に積んでおくのと大差ないかもしれません。全社的に残業が無いような状況に持っていければ、もしかしたら従来の雇用形態の方が得かもしれませんが…
もう一つ、管理者が手当てをする責任と原資がどこにあるのか。管理者自身の責任なのか会社の責任なのか、そういう事態になったことが管理者にとって不当なマイナス査定にならないか、等において明確にしておかなければならないと思います。さて、これを査定するのは誰か。
あとは、スピード感の問題ですね。一人急病で倒れた、今日が納期、みたいなパターンで、いちいち新たな目標合意をとって作業をする、というのは時間の面でナンセンスですが、それをちゃんとできないと、制度が形骸化してしまいます。
というわけで

昨日も書きましたが、WEを導入するには、科学的・民主的プロセスで作った目標設定と、誰がやっても変わらない絶対的評価査定と、個人と企業人とを混同しない冷静なマネジメントができる管理システムが必要です。
そしてそのマネジメントのためには、管理職に責任と共に権限をも与えなければ、結局絵に描いた餅に終わってしまうのです。
経営陣をTOPに大きな三角形の組織ではなく、部課長管理職をTOPにした小さな三角形が大きな三角形を構成する組織を作らなければ、真の意味の成果主義労働は達成不可能です。

http://d.hatena.ne.jp/yellowbell/20070915

こうなっちゃうわけですよね。
管理職って言っても、結構実務をしなければならない部分もあって、実は、そこがまた一つのポイントなのではないかと思っています。実務をしなければならない管理職は、実務の部分は仕事量も評価してもらいたいし、管理の部分を問題が起きたときの為に一定時間確保しておくと、遊んでいるように見えてしまうし、働き方が非常に難しいものだと思います。じゃあ単純に仕事を切り分ければ良いかというと、そういうことでもなくて、管理者レベルの人の実務能力というのは往々にしてお客さん側に見えているものであって、見込まれている部分でもあったりします。
実は、働かせ方の問題というのは、自社の体制だけではなく、付き合っていかなければならないお客さん側の問題でもあったりします。お互いが要求できる範囲が明確でないことが多いし、これは日本の企業の問題かも知れません。
ただ、仕事というのは、僕はやっぱり契約と金だけでやるものではないと思っているし、そのへんを上手く利用しつつ、会社に足元を見られないような、そんな社会であればよいのですが…資本主義社会ってそうじゃないよね。残念ながら。

*1:少なくとも、現場に一定時間数以上ちゃんと来ているのであれば最低賃金は出さなくてはならない