WEと労働の価値について

会社に所属するということは、いくつかのメリットがあって、例えば一人では出来ない仕事が出来ること、仕事がなくても給料が保証されること、などなど。その分デメリットがあって、「成果が収入に直結しない」ことだ。これは会社という組織に所属することを選んだ時点では当然なんだけど、その代わりに、労働時間という別の価値を会社に提供し、残業代またはボーナスでそれに報いることがある。一般的に、時間で評価しやすい下っ端は残業代であり、成果で評価しやすい管理職は後者である。

仕事というのは労働の価値に見合った対価が支払われるべきであって、それにかけた時間や大変さはまさにそんなの関係ねーなんである。
同じような仕事をしていても自分より有名な人は沢山稼ぐし、自分より稼げていない同業者も沢山いる。
自分の価値生産性は自分が引き上げていく以外に方法は無い。

http://d.hatena.ne.jp/ululun/20070914/1189736042

というのは確かに正論なんだけど、先に述べたとおり、成果と収入は直結しないんですよ、サラリーマンは。じゃあ、成果は何に変換されるのか。「評価される可能性」に変換されます。なぜ可能性か。

  • 相性の悪い上司に握りつぶされる
  • 上司の成果に自動変換される
  • 会社全体の業績が悪いので今期は我慢して(当然あとから遡ってなど評価されない)
  • 客観的に評価しづらい仕事で、成果に見合った評価がされない
  • etc...

という様々な理由により、どんなに成果をあげても評価されないこともあるわけです。
そんな中で、与えられたポジション(=月給)の中で、振られた仕事がオーバーであった場合にそれをこなす分としての残業における対価というものは定量的に必要なものです。今のホワイトカラーの仕事のかなりの部分が体を使わないだけのブルーカラー的労働であることを考えてもこれは妥当。

労働の形態や内容が異なったら得るべき賃金が異なっても構わないと思うほうが謎というか、自分はこの給料だったらこれだけの時間しか働きませんよ、と言うのか、それとも与えられたノルマをこなさなければ給料が貰えないと考えるのかは自由って事でしょ。

http://d.hatena.ne.jp/ululun/20070914/1189736042

これも正論なんだけど、逆に、過剰なノルマを与えられたとき、自営業者は拒否できるけれども、サラリーマンは色々な理由で拒否できません*1

ホワエグの本質が「残業代が出なければさっさと帰ればいいじゃない」ではないのは観察すればわかる事だし、finalvent氏自身もそんな事は一言も言ってはいない。

http://d.hatena.ne.jp/ululun/20070914/1189736042

もちろんホワエグの本質は「残業代が出なければさっさと帰ればいいじゃない」ではない。「残業代でないけど血反吐を吐いても残業しろ」です。なぜこんな表現になるかというと、残業が自己責任になってしまうから。その本質を「残業代が出なければ早く帰る動機付けになる」と言い換えてしまうセンスに皆怒りを覚えているのですよ。


「残業」を減らすことは、WEの目的ではありません。「残業代」を減らすことが目的なのですから。僕は意味のない残業は大いに減らすべきだと思うし、それは意味のない残業をしている、という事実を評価することだったり、上司が適正なノルマを与えているか、会社として月給に見合わない過酷な仕事を要求していないか、等々をきちんと見ていくことで実現すべきことだと思っています。WEによる残業代抑制は、するべき残業に対価を払うことが難しい(月給をその分上げるというのは会社経営的にどうかと思うし、ボーナスは会社全体の業績に左右される部分が大きい)。
会社の仕事というのは、先にあげたメリットの半面で、会社のピンチをみんなで頑張って乗り越えなければならない局面も多いです。一抜けたってするのは簡単だけど、何百人も路頭に迷う可能性があるときに、自分がよければいいなんてのはなかなかできないことだし、僕はしたくないと思うけど、まあそういうメンタルの人が会社に勤める人なんだろうな、とも思います。良く「人財」って言われるけれど、最近はほんとに深刻で、その原因はいろいろあるけど例えば
Tohru’s diary - アウトソーシングのために必要なインソースってのもあってね、
なんて読むとなんとなくわかるんじゃないかなあ。
WEをあまねく適用すると、仕事の成果への対価を評価=収入にできる会社に資源が集中してしまうだろうし、作業的仕事に従事している人はみんな派遣の方が効率が良くなってしまうし、現場たたき上げの人材も育ちにくいだろうし。
出来ない人にも、頑張って労働によって価値を創出して欲しい、というのが会社という組織であるべき。とはいってもまあこの辺は難しい話で「なんであんな奴が俺より月給高いんだ」問題とかそういうのは色々ありますね。その辺を何とかしていくのはWE以前の問題だと思っています。

*1:法律的に可能、というのは何の解決にもならない。過剰だ、と思っている人自身もやらなければならないことはわかっていて、それに対して正当な対価がもらえればやるべきだ、と思っていることが大部分だから