システム屋さんというもの

昨日は銀行のシステム屋がそれほど悲惨なところばかりではないということを書いたわけですが、そもそも結構な人がシステム屋というものを勘違いしているような気がします。と言うわけで、少し個別のトピックについて。

もはや特殊領域ではない

これほど世の中にシステムが広まって、依存していると言うのに、システム開発と言うのが一部のギークによって行われているか、と言うとそんなわけがありません。最先端の技術開発や、先行導入、真に新しいサービスの発明など、それこそ大学でIT関連技術を学んだ人の出番は沢山ありますが、それはシチュエーションが完全に限定されています。世の中の大部分のSEとしての仕事は、言うなれば導入です。新規のシステム開発と言うのは、多かれ少なかれ、過去のものを新しく組み立てているに過ぎません。だってそうでしょ。建物だって外観の差はあれ「斬新な設計によりトイレ不要」とかありえないわけで。
そんな中で、少なからずの人が、ほぼ事務屋さんと同じレベルで生きている。システム部門なんて、特殊な領域ではありません。むしろ、〜今も昔も理解され難いことは多いけれども〜会社の中核を担う部門としては、その一部の機能は経理や法務と同じようなものです。

保守

そして、作られたシステムは運用されなければ意味がありません。日々運用すること。これが至上命題であり、その為に課せられる制約事項と言うのも沢山あります。一見効率が悪いように見えてもそれは法令順守のためであったり、思い込みによるトラブルを排除するためであったり、一つ一つに目的があります。決して頭でっかちなだけのものではありません。
これももはや会社としては日常の存在であり、破壊的な創造性を必要とはしません。

レガシー

今やメインフレームLinuxが動く時代ですが、「ホスト」と「メインフレーム」を混同している人も結構いますね。メインフレームの魅力はなんと言ってもその耐障害性であり、まあ富士通なんかはIAサーバにメインフレームの基盤技術を応用しようとして色々やっていますが、システムとしてはその上に何が乗っかるかの問題であり、ハードウェア自体にはだんだん依存しなくなっています。だってみんな仮想化されて来ているわけで。とは言ってもいわゆるレガシーなシステムは残っています。それにも何種類かあって、使用する言語(≒設計)がレガシーである場合と、本当にホスト−端末式のシステムが残っている場合。前者については、SOA化の流れ*1の中で、サービスコンポーネント毎に適切な実装がなされていればそれほど問題にはなりませんし、後者については端末側の問題があるとはいえ、銀行端末でいえば、実体はほとんどWindowsですからリプレイスのタイミングはあるでしょう。
これから先、レガシーマイグレーションの仕事は頻繁にあるし、新しいことを知っていて、やりたがっている、ホストの技術を持った人は重宝されるはず。

みんなはSI業界に何を望むか

学校で技術を学んだ学生にとって、SI業界は魅力に乏しいと感じることは自然なことだと思います。SIとしての仕事の大部分は、建設業界で言えば現場で家を建てているような作業。ある程度決められた枠の中でしかできないこともあるし。でも、ごく一部、そうではない領域があって、そこでどれだけのことができるかがその会社の未来を決めます。だから、後は仕事としてのかかわり方の問題です。
しつこいようですが、SEと言う仕事はもはや経理や法務やその他の仕事とあまり変わりがありません。このことは、会社によって部門の待遇も、一人一人の権限も違うと言うことを示しています。アレをやりたいコレをやりたい、と言う気持ちはなんとなくクリエイティブイメージを持っているSEという仕事ではありがちですが、会社としてはそこは戦略的なコマとして動いてくれなければ困ってしまいます。
結局、給料などの待遇と、出来る仕事(これはSEとしてのポジションもそうだし、対象としているシステムもそう。付き合っているお客さんも)とを考えて見合っていればいい環境でしょう。他の職種のことも頭に入れると。SEだから特別新しいことをやれる、と言うのは幻想だし、それでもちょっとモノを作っている実感を感じられる職種ではありますから、本当にそれがしたいのであれば、問題ない。
そして、真にクリエイティブな職はね、7Kとか言っている場合じゃないんですよ。創造的な衝動が定時の時間で抑えられるクリエイターもいてもいいのかも知れないけど、そういうの求めているんじゃないの?定時で帰れてすごいものを作る人もいっぱいいますよ。でもそれサラリーマンであることには変わらないよね。もう一度言います。SEは特殊業務じゃありません。だから、サラリーマンとして会社に所属してやるのであれば、そのことによる制約は他の職種と変わりません。社内事務が面倒とか俺らが何でこんなことをやらなきゃみたいな愚痴は幻想の世界のものですよ、多分。

でもね

大手SIerの仕事の仕方やSEに対する認識がアレなのも現実。つまりコレはSIerと言う業界がダメなのではなくて、その会社がダメってこと。何度も言うけど、特殊な仕事じゃないんだから、仕事していい思いをするか悪い思いをするかは入った会社に依存。どの世界もそう。ちゃんと考えて選ぼう。

*1:当然ですが、次期システムもレガシーで行きましょう!なんてノー天気な銀行はそんなにありません