IT史に輝く「すべった?」テクノロジーへの追慕(その1)

絶対おっさんホイホイだよな、あの記事。まあ、僕はその中でもわりと若い方だと思いますが。思いますってば!

「少数に絶賛も、多数に非難」の悲しきプロジェクトたち

http://www.computerworld.jp/topics/move/114629-1.html

だそうですが、すべったのはテクノロジーじゃなくて、マーケティングだったりもするので、一個ずつ見て行きましょう。

25位 IBM PS/2

今やPS/2ポートすら過去の遺物として葬り去られようとしているのです。第一、当時はPC-98のマウスポートと互換性がありませんでしたよ。そういえば、マウスはコンピュータ普及期にはみんな使っていたイメージがあるという人もいるかもしれませんが、GUIがない時代にマウスの重要性はあまりなく。15年前にタイムスリップしたら「俺PC詳しいぜ!」って思っている人が打ちひしがれて立ち直れないこと請け合い。
PS/2自体はソフトウェア互換性を残しながらハードウェア互換性を失うという意味不明な戦略であったのは確かですねえ。ソフトウェアが互換なら安い方を使いますよみんな。

24位 バーチャル・リアリティ

ヘッドマウントディスプレイで入り込むバーチャルリアリティーの世界のイメージは当時としては画期的だったと思いますが、ニューロマンサー的なサイバーパンクを経験した人々にはそれほど正しい姿には思えなかったと思いますよ。

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)

セカンドライフとかはそこそこ流行ったけど、あれはバーチャル「リアリティ」じゃなくて、単なる仮想世界だよね。バーチャルリアリティといえばコレでしょ⇒http://homepage3.nifty.com/poco-pen/p-fpg-02.htm
I/Fの革命なくして、バーチャルリアリティーはありえません。

23位 ARCアーカイバ

汎用的な、しかし小さい技術を独占しようとすると、別の小さい技術にリプレースされてしまうという例。特にソフトウェアにおける、ある特定のロジックの独占は、それに変わるロジックの登場によって完全に駆逐される。汎用的なものを独占することで一番悪い点は「憎まれる」ことである。憎まれるビジネスは成功しない。その憎しみを解消するためにタダで提供しようとするハッカー達が沢山いる限り。
GIFでもこんな話がありましたね。あれはなし崩し的になんとかなっちゃったけど。

22位 OpenDoc

コンセプトは実に正しかったんだけど、当時のアップルのハードウェア戦略・ソフトウェア戦略が共に迷走している中で、これを生かしきれるだけの正しい設計を行うことができなかった。というか、マックはOS自体が行き止まりにぶち当たっていたところだと思う。

21位 プッシュ技術

知っているでしょう。Windows98のデスクトップに張り付いていた邪魔なニュースサイトのバーみたいなものが。あれでもWin98が登場したときは、デスクトップをWebデスクトップにして様々なサイトの更新情報を集めていた人が結構いたんですよ。でも結局邪魔っけなんだよねアレ。メモリが今ほどなかったということもあります。今では同じようなことをGadgetで実現しているけど、まあWebのことはWebでやりなさいと。リクエスト⇒レスポンスしかないHttpで色々出来るのにも限界が。
というのが僕らの思い出すプッシュ技術。PointCast?それ喰いもの?

20位 Copland

今思うとOS X以前のマックの画面ってわりと古臭いよね。アップル内の政治的な色々があろうがなかろうが、失敗すべくして失敗したように思えなくもないけど、こいつで実現しようとしていたことがなんだったかはもはや記憶の外。

19位 GNU Hurd

これは別にテクノロジーがすべっているわけじゃないと思うけどね。

18位 Oracle Raw Iron

ネタが尽きてきました!取り上げる価値があるとも思えません。

17位 B2B型eコマース

これはテクノロジーの問題なの?ワールドワイドな調達が当たり前になった昨今、B2Bは中抜きどころかEnd to Endになってきているわけで、単にベンチャーが仲介業をやる余地がなかっただけではないのかな。

16位 Apple Newton

これが失敗したことは実に興味深い話ではある。本質的にはアップルの作るものが真にビジネスツールではないことが問題なのかも知れない。iPodの成功は機能を割り切ったことである、と考えると、Newtonはいらないものが多すぎた。もっとも、当時はそれが必要なものの全てだった。つまり、成功の余地はなかったのかもしれない。
日本で電子手帳が駆逐されたのは、PCがそれをリプレースしたのではなくて、情報の持ち方が変わってきたからだろう。電子デバイスに持つべきもの、紙の手帳に持つべきもの。持つべきものが電子手帳の枠を超えてしまったとき、効率のいい持ち方が変わってしまっただけだ。今Newtonが復活したとして、それに持たせるものは何かと考えると、iPodで十分と考えてしまう。

15位 Palm OS Cobalt

大変残念ながら、Palmは過渡期のテクノロジーだった。僕もIBMのWorkPadを就職活動期に使い倒した記憶があり、あの当時の他が比肩すべくもない素晴らしいインタフェースは、しかし、ハードウェアの進化と共に陳腐化してしまった。あくまでコンセプトキープのCobaltになんの意味があるのか。
UIの進化とハードウェアの進化はある程度同調していかないと面白いものは産まれていかない。

14位 Netscape 6

ネットスケープが、何を収益にしようとしているのかがわからなかった人が当時多かったに違いない。特にコンシューマー市場では。良く言えばIEの、つまりMSの犠牲者なんだけど、悪く言えば、何やっていいかわからなくて迷走してただけ。
これはテクノロジーの敗北か?そうではなく、戦略の失敗に他ならない。ブラウザを中途半端に戦略の核にすえていたからではないかな。結果として、できたものが中途半端だった。

13位 検索ポータル

ここへ到ってこの記事の意図がわからなくなってきたぞ。いわゆるドットコムバブルの敗残者紹介なだけじゃない?
ここに上げられたような検索ポータルが持っていた技術は他のポータルに吸収された。単に広告を打つ価値のあるサイトがそんなに沢山あるってことじゃなかったってだけでしょう。視聴率ほど曖昧じゃないPVという指標に基づき、多くのPVを集めるサイトに広告が集中するだろうことはわかっていた。それでもGoogleのトップページが未だにアレであることは、何かを象徴している。
まあ、いずれにせよ「総合」検索ポータルなんてそんなに必要なものじゃない。ごくたまに、Yahooにでも行けば十分と考えている人が多いのは、先行者利益に過ぎないとはいえ、ウェブの仕組み上それ以上のものはいらない。Noなんて突きつける以前に存在知らないし。

12位IPv6

まだだ、まだやられんよ…
IPv6には色々な問題があるし、IPアドレス枯渇問題が必ずしも真実であるとはいえない。というよりは、IPアドレスの使用用途が当初見込んだほど広がっていないだけかも知れないけど。
このまま手をこまねいていることが将来のウェブの崩壊(あるいは行き詰まり)に繋がるのか繋がらないのか。資源がある程度集中管理されていく方向に動いている現状を見ると、どちらともいえないな。

11位 Microsoft .NET Passport

なんじゃこりゃ。少なくともこの一つをとって何かが語れるとは思えないけれども、シングルサインオン技術を含んだ個人認証技術とその安全性、機密性がこれからのテクノロジーの一つの課題であることは確かだと思うのだけど。だから、ここで語られていることは、過渡期の問題に過ぎない。

前編のまとめ

ほら、25位とか24位を見ると明らかにおっさんホイホイじゃないですか。ところが、蓋を開けてみたら最近の単なる失敗したベンチャーのプロジェクト見本市みたいになっています。何が「IT史に輝く」「少数に絶賛」なんだか。全くもって25位まで選出するほどの価値があるものとは思えないものばかり。
ベスト10には期待しますよ。某シグ…ん、こんな時間にお客さんが…