語源を常に把握する必要はあるのか(sk-44さんへの応答として)

そもそものエントリで場を提示し忘れたので、今更ながらでありますが。
http://d.hatena.ne.jp/sandercohen/20080813/1218631196 ※脚注1「デスマっててね」⇒追記
はてなブックマーク - なんで飛躍だと感じたのかやっとわかったよ - 相見えぬ未来 ※Apeman氏のブクマ
ついにデスマーチもか - novtan別館

まず、初めに言うと、上記エントリでも書いた通り、語源にこだわる必要のある言葉というものは確かにあって、それについての指摘をすること自体は言葉狩りだと思っていません。

ホロコースト」という「単語」とその「濫用」の問題を「問題」として提示するなら、「デスマーチ」という「単語」とその「濫用」に対して同様の視座を前提するべきであって、そうでないなら少なくとも他者の行為を問題としうるものではない。「ホロコースト」という「単語」とその「濫用」の問題を他者の行為に対して批判的に提示するなら、ですが。「だったら」とはそういうことです。

「単語」と「濫用」と「言葉狩り」と - 地を這う難破船

ちょっとこのやりとりからは「だったら」がそうであることは読み取れませんでした。

Apeman 2008/08/19 21:52
>えー、じゃあ言葉狩りなんてされてないんじゃないですか?使うなって言われたんですか?

はい、言われました。まさか「恐ろしい」とか「許せない」とか言われただけで文字通りに「言うな」と言われたわけじゃないだろ? とか言いませんよね? だったらわたしだってひとことも「デスマって言うな」なんて言ってませんから。

ついにデスマーチもか - novtan別館

この「だったら」は明らかに「はい、言われました」⇒「とか言いませんよね?」というのを受けていて、つまり、直接的には言わてないけれども、間接的には言われた、その構造と同じレベルでは、言った、と受け取るのが自然に見えます。そのことについて当人には異論があるかもしれませんが、この文だけ見て他の意を汲み取るのは少々困難です。そもそもが

Apeman 2008/08/17 11:51
私のことだとして(違うなら消してもらってけっこう)、「言葉狩り」をされてるのは私らの方なんですよ。「ホロコーストって言うな!」って。「人類史上の悲劇を楽しんでる」って。そういう「言葉狩り」に与する人間が「デスマ」なんて軽々しく使うのはおかしくね? ってことなんですが。

ついにデスマーチもか - novtan別館

が発端です。僕は少なくともsandercohen氏のエントリがホロコーストの濫用を問題としているようには見えませんでした。HALTAN氏の主張に無条件に賛同されているようにも。違和感の原因を探っているエントリだと思います。一方で、氏はなんら政治的の文脈のない、自分の状況を表わす一般的な単語として「デスマ」を使ったら語義を問われ、問答無用で自爆と認定されています。
sk-44さんのおっしゃる行為の対象性については、確かにそういう面はあるかな、と思ってはいます。が、構造的な問題に、問題の所在が帰するのであれば、事は単純です。そうでないから、トリアージホロコーストという強く特定の事象に結びついた言葉の解釈が問題となっていると解釈しています。デスマはここに並び立てる資格がある言葉ではないように思っています。

。「言葉狩り」とは「強力な歴史的含意と政治的含意を有する単語」を「濫用」でなくとも使用するべきではない、とする発想のことであって、そして「濫用」でないことの説明を経たにもかかわらず根拠なくそう断定したうえで咎めることを普通は「言葉狩り」の発想と言います。「濫用」でない使用を「濫用」という断定において否とするからです。すなわち「濫用」という断定が目的を含みます。

「単語」と「濫用」と「言葉狩り」と - 地を這う難破船

無論、ホロコーストデスマーチの一部だ、という捉え方をすることはわかります。しかし、ホロコーストという単語が(ナチス以外のそれを含むジェノサイド)という意味から逸脱した単語になったことはないと思います。ナチス(ホロコースト)の話をしているときにデスマーチという単語を無頓着に使うとは不謹慎な、という批判であれば、批判として受け取れると思います。が、文脈的に明らかな言葉の使い方に対して、

「デスマ」って言葉が何に由来しているかに無頓着な時点で自爆。/知識の問題じゃなく、「デスマーチ」という言葉になにも感じない人間が「ホロコースト」に感じる「違和感」なんてただのポジショントーク

はてなブックマーク - なんで飛躍だと感じたのかやっとわかったよ - 相見えぬ未来

と応答されることが正当な批判であるとは僕にはどうしても思えません。

真摯であるにもかかわらず噛み合わない一方の議論を見るのは切ないと、節操において軽薄な私は思うのです。余計な御節介であったら申し訳ありません。

「単語」と「濫用」と「言葉狩り」と - 地を這う難破船

何故噛みあわないのか、はずーっと考えています。コメントでも指摘したとおり、言葉の行き違いの問題であること、あるいはsk-44さんがご指摘の通り、問題の所在の問題であることなど、様々な原因があると思っています。が、最終的には振る舞いの問題であるようにも思っています。

言葉狩り」と記すということは、NOV1975さんは「デスマーチ」について「単語」の問題と考えておられるのですよね。そして「ホロコースト」については「単語」の問題と考えておられない、ということですか。「XXに対してホロコーストと同じ構造だと言うのはおかしい、と言われただけでしょ。」と、すなわち「構造」「内実」の問題と。Sokalianさんの議論はおおよそそうです。しかしたとえばHALTANさんの主張はそうではない。「単語」の問題としてその「濫用」を批判的に指摘していました。

「単語」と「濫用」と「言葉狩り」と - 地を這う難破船

コメント欄でのやりとりについては、「言葉狩りをされたのはこちらのほう」という発言に僕が過剰反応しているところはあります。単純に言ってしまえば文脈の問題です。僕は全ての関連エントリをフォローし切れていないので、どうしてもその場でのやりとりを重要視してしまうところがあります。sandercohen氏がそこまで言われるに値する言動を行っていたか、とは思えなかったことをもって「言葉狩り」としてしまったのは少々拙速に過ぎたのかもしれません。対抗言論としてというよりは、普段使いの言葉として使ってる身からして、言わざるを得ないものではあったと思います。それこそ、IT屋として。
コメント欄での応答が言葉狩りか否かに終始してしまっているのは残念です。