「業界の常識」という悪習

実名報道の件は言いたかったことをほとんど言ってくれた人がいるので直接は触れない。あの話で新聞記者の人が気持ち悪い自意識を「業界の常識」なる言葉で正当化していたんだけれども、ウェブ時代において、世間の常識と異なる常識を安易に持ち出すことはその業界の硬直性や悪質性が露わになるだけでなんの説得力も持たない、と言うことは情報を分析し訴求力のある文章で読者に提示するという記者というお仕事の最も得意な部分であるはずなので、新聞が衰退したのはインターネットのせいなのではなく、そういった常識からなる情報の押し付けに社会が辟易していたせいなんだろうなあと思ってしまった。
体罰問題もそうだけど、世間の「常識」からかけ離れていることを業界の常識と弁解することが多いように思う。でも、それ全然言い訳になってませんから。むしろ悪いと知りながら悪習に手を染めたとしか聞こえませんから。悪い話でなければ違う常識があって良いんだけど、例えば「偽装請負は日常茶飯事なのが業界の常識」といわれて「じゃあしょうがないか」なんて思ってもらえるわけがない。普段は公務員とか教師の起こした犯罪をもってなぜか一般化して「教師という職業は常識に欠ける」みたいな報道をしているメディアが自分たちの独りよがりな正義については業界の常識なんて言い訳をすることの非対称性にはもう笑うことしかできない。