ターミナル・エクスペリメント / ロバート・J. ソウヤー

ターミナル・エクスペリメント (ハヤカワSF)

ターミナル・エクスペリメント (ハヤカワSF)

ネビュラ賞受賞作。
主人公は偶然、死んだ瞬間に魂と思われるものを発見してしまいます。と、普通ならここで魂の存在をめぐって政治宗教入り乱れた陰謀劇が展開されそうなものですが、そこはソウヤー、そんなの知らんとばかりに突き進みます。主人公は自分の脳をスキャンし、コンピューター内にシミュレーションとして構築します。一つはそのまま、一つは死を排除したもの、一つは死後の魂として。これにより、魂の正体を探ろうというのです。ところが、そのシミュレーションのうち一つが、現実とコンタクトを取って殺人(依頼)を始めたとわかります。その犯人は、そしてその動機はなんなのか…
というわけで、犯人探しミステリに変身です。もともとSFとミステリは紙一重な部分がありますが、真相にテーマを上手く結び付けている点はいわゆるSFらしいSFと言えるでしょう。個人的には魂の存在についての論をもっと突き詰めて欲しかったのですが、人格の問題に終始してしまったような気がします。となると、本質的にはミステリなのかな、この小説は。