奇偶 / 山口雅也

奇偶 (講談社ノベルス)

奇偶 (講談社ノベルス)

メタメタミステリ的な。小説として面白いかは別として、取り組んだものについては評価に値すると思う…というと面白くなかったみたいですね。ミステリにおける一つの永遠の課題「偶然」に真っ向から挑むって感じです。僕のメタ的なミステリについての見解を言うと、「ミステリとは起きた偶然を切り出したものである」になるので、ある種の偶然は起きて当たり前だし、それを前提にロジックを組んでも問題ないような気がしますが、やはり作家と言うものは完璧な世界を追求するものなのでしょうか。
さて、宗教・哲学・心理学から量子論による多次元解釈まで飛び出す衒学趣味と言うよりはSF趣味なこの長編、その論理展開は面白いものの、ミステリとしてはどうかな、と言うオチが待っていました。ドッキリカメラ的なオチでも良いからもう少し現実との接点が欲しかったような。投げっぱなしです。
奇偶(上) (講談社文庫) 奇偶(下) (講談社文庫) 文庫版も。