フィリップ・K・ディック / まだ人間じゃない

ディック傑作集〈4〉まだ人間じゃない (ハヤカワ文庫SF)

ディック傑作集〈4〉まだ人間じゃない (ハヤカワ文庫SF)

上記短編集に所収。
赤ちゃんポストの話は、まだ一度生まれ出た生命を肯定しているものであるから、発想として誤りではないと僕は思うのです。子供が要らない、という発想を推し進めていくと、最後にはこの境地に到ってしまうのかなあと思うと、あまり未来に思いを馳せたくなくなります。
ディックの書く未来は大抵が絶望に満ち溢れていて、たまに希望がある。でも相対的に見て、ディックがこれを書いていた時代から今、今僕らが創造してしまう未来、それらがそんなにずれているとも思えないから、最悪の事態をなんとか避けつつ人類はなんとかやってきているのかもしれないし、これから起こるのかもしれない。
中高生くらいのときにディックの短編の洗礼を受けさせたほうがよいなんと考えてしまったりするんだよね。圧倒的な絶望的未来ののビジョンを一度は見るという意味で。でもそろそろ古いかなあ。
収集されている他の短編では「CM地獄」なんてまさに今の社会の投影に思えて面白い。