「筋の問題」なら尚更、大麻取締法を厳格に適用すべきなんだ

最近大麻が世間を騒がせすぎなのに対して「大して害もないのに。タバコや酒のほうが危ないじゃん」という形で異を唱える人がそれなりにいるようです。
諸外国で規制が弛んできた、という事実や、実際に害が少なそうな話があって、今まで規制されていたのは陰謀とか過剰な危険性の喧伝とかの結果だとかいうわけだけど、良く考えてみよう。
諸外国だってようやく最近になって、「それほど害がないんじゃないか」ということが認められるようになって、規制が弛んできたわけだよね。もちろん、そこには「以前からそんなことわかっていたじゃないか」という反論はあっていい。でも、病気の特効薬ならともかく、嗜好品で他の麻薬と似たような効果があって、麻薬の最初のステップになるかも知れない大麻を解禁することに及び腰であることはおかしくない。陰謀かも知れないけれども、じゃあ陰謀だったときに損するのは誰かっていうと…いるんだっけ?
いずれにしても、そういう経緯があって今解禁されていない、明らかに遺法だし厳罰が科せられるということが知れ渡っている大麻を好奇心だろうがなんだろうがやったり持っていたりする、ということが許されてよいというのはおかしい。なんていうとスピード違反は厳格に適用されていないって言われるかも知れないけどね。でもあっちがなあなあなんだからこっちもなあなあにしろってのはちょっとどうなのかな。スピード違反は程度の違反だから誤差の範囲では捕まらないし、一般に言われる20km/hオーバーくらいまでは捕まらないってのも警察がその気になれば捕まる。罪が最初から免除されているわけじゃない。
今、犯罪である大麻をやっちゃうってのはそもそもその人の自制心が疑わしいと思ってしまう。そんな人はだんだん我慢できなくなって強い麻薬に行っちゃうんじゃないの?とか。その先の麻薬は一般に解禁することはできないから、当然出回るのは闇になって裏社会の資金源になるよね。そういう入り口を止めるのも一つの大麻を取りしまる大きな目的ではあります。

というわけで、筋の問題は「今の法律は守りましょう、それがおかしいなら法律を変えましょう」なんだよね。法治国家なんだから。

そもそも、大麻を擁護する人って大麻を解禁してどうしたいと思っているのかなあ。
僕も学生の頃、専門の関係で色々な薬物を調べたし、本も色々読んだ。大麻についてはそこそこ詳しくなって、「こんなの解禁すればよいのにね」と思ったし、今もそう思うことはある。でも、厳罰が処されるのをわかっていて、今、大麻を所持しようとは思わない。本気でやりたいんだったら議員を動かす方向で運動しないとね。その際にいかに害がないかというエビデンスはもちろん必要だろう。
そう思う一方で、大麻を解禁してなんか意味があるのかな、とも思うわけ。僕は酒は飲むけれど、あれは自制心を失わせる悪い部分が大きいよと思う。味が一緒で30分くらいで醒める酒があればそれが欲しい。別に飲み会の後もずっと酔っていたいわけじゃないのだ。寝酒なんかは話が違うけど。じゃあ、大麻はどうなのと。まあ似たようなものかな?陶酔作用が主で、基本ダウナーだから酒よりうるさくなさそうだけど。
嗜好品だから、必要性なんていっても仕方がないのかもしれない。やりたいか、やりたくないか。

僕は、大麻の害は今のところそれほどないという研究が正しいのではと思っているし、他の麻薬への入り口にはならないことが認められて解禁されたらどんなものなのか試してみたいとは思います。でも、今の日本で大麻を吸うことが正しいとは思いません、という立場です。「害がないならいーじゃん」とは考えたくないということね。

Wikipediaから大麻の項目を抜書き

さて、折角だから、Wikipediaの項目からいくつかピックアップして紹介しましょう。全てが真実ではないとは思いますが。

日本では大麻取締法による規制を受ける麻薬[2]であり、大麻精神病の原因薬物とされている。日本では、大麻の無許可所持は最高刑が懲役5年の犯罪であり、営利目的の栽培は最高刑が懲役10年の犯罪である。

大麻 - Wikipedia

とりあえず、今の日本では間違っても大麻を所持しないほうがよさそうです。

大麻の有害性について、社会の中に様々な考えがある。日本(厚生労働省)の見解とは反対に、大麻にも少なからず害はあるが酒やタバコと比べれば害は低いとする意見がある。実際、大麻の過剰摂取によって、死亡したり、恒久的な損傷を被ったとする報告は現在までにない。大麻使用者の交通事故や殺人での死亡も、非使用者と同等か低い率としている[10]。

大麻 - Wikipedia

大麻の「有害性が相対的に低い」というのは、過剰に摂取しても死ぬことはほとんどない、ということがメインです。

WHO「健康および心理に対するアルコール、インド麻、ニコチン、麻薬摂取の結果の相対的な評価 (A comparative appraisal of the health and psychological consequences of alcohol, cannabis, nicotine and opiate use) 」[13]には、明確にアルコールやタバコよりも害が少ない、と明記されている。しかし、同じWHOによる97年の、「カナビス:公衆衛生上の観点と調査事項 Cannabis:a health perspective and research agenda」[14]と題する大麻に関するリポートは、先の文書には矛盾した非科学的な内容が含まれるとしてタバコとアルコールとの比較を明示するのを避けている[15]。

大麻 - Wikipedia

害が少ない、という研究に対しては実際には異論があるようです。まだ明確じゃない部分が多いかも知れません。

同年3月にイギリス保健省が「統合失調症全患者約4万人に対して大麻に関連した患者はごく少数」と報告[17]した。
一方、イギリス医学ジャーナルのオランダの研究とスウェーデンの研究、ニュージーランドの研究をレビューした同誌の論説では、統合失調症患者の13%が大麻精神病としている[18]。 スウェーデンの研究では大麻統合失調症を引き起こす原因になるという因果モデルを前提に、調査結果を考慮して人口全体の大麻経験率が50%で、統合失調症のリスクが30%増えると仮定した場合、統合失調症患者の13%は大麻精神病とする仮説を唱えている。

大麻 - Wikipedia

[18]は2002年の資料。対人口のボリュームのある研究はなされていないから仮説です。

アメリカ麻薬取締局 (DEA) の主張では、大麻使用者がコカインを使用する確率は通常の104倍[19]であるとしており、これを根拠に大麻ゲートウェイドラッグと位置づけている。
しかし、DEAのこの主張の引用元である国立ドラッグ乱用研究所 (NIDA)が、1975年に行った研究を元にした記述[20]には104倍という具体的な数字はなく「非常に大きい (much greater) 」としか書かれていない。そのため、104倍という数字の出典は不明である。

大麻 - Wikipedia

ゲートウェイになるかどうかについてはこういう意見もある反面、そうではないよ、という意見もあります。

[25]2006年のヨーロッパ・ドラッグ監視センター (EMCDDA) の報告[26]ではドラッグの多重使用について主に使用しているドラッグ別に使用者をグループ分けをして分析した結果、大麻グループはが他のドラッグを使うこと自体が少ないことが分かっている。このほかに、大麻が置かれている法的立場がこうしたゲートウェイになっているとの見解がある[27]。

大麻 - Wikipedia

オランダではヘロインの使用者が減少傾向にあるそうです。ドラッグ摂取について大麻のレベルで満足できる人のほうが多いのであれば、遺法でなくなることのメリットはそれなりにありそうです。

1999年のカナダで行われた研究では、大麻の依存症は他の薬物に比べて高くはなくタバコ、アルコール、ヘロインより弱いとされている[63]。

大麻 - Wikipedia

実際に依存性は様々な研究での評価でも低いとされています。一方で、

しかし、疫学的には、ECA Study (Epidemiologic Catchment Area Study, 1994) で米国北部で調査された2万人のうち4.4%が大麻を乱用し、その約5分の3が大麻依存状態であることが示された。

大麻 - Wikipedia

という話があります。このへんは色々と複雑な話になっているようで…

そして、同1994年に改定された精神医学の診断指針である 『精神障害の診断と統計の手引き』第四版により、大麻の依存症の概念は変革を迎えた[12]。第四版における薬物依存の診断には、身体依存を必要とせず、既存の依存の考え方を改定する物だった。これにもとづく新たな依存の考え方のもとで大麻の依存は研究されることとなった。

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これは「ん?」と思いますよね。大麻の害を何が何でも作り出したい人の都合のいい視点での研究なのか、あるいはこういうアプローチで初めて実態が炙り出されたのか。先を見てみましょう。

2001年の大麻常用者12人に大麻摂取を断たせた研究[64]では、全員が食欲が落ち、眠れず、そわそわ・いらいら、攻撃性亢進が見られたが、大麻摂取でそれらは消失した[65](禁断症状発症率は、95%信頼区間で78%以上)。これらのことや他の複数の研究[66][67][68]から、大麻常用者は実験的に高率に禁断症状を発症しうると考えられている。

大麻 - Wikipedia

あんまりタバコと変わらんなww

最後に

まあ、そんなわけで、まだ良くわかっていない部分も多いけれども、今まで大っぴらには出来なかった疫学的な調査もヨーロッパの規制緩和により蓄積されてくるでしょう。ヨーロッパ圏はどうも日本に比べたら「自己責任」の度合いが強いようなのですが、例えば飲酒に対する厳格性は日本よりはるかに高いのですよね。罰則も含めて。飲酒運転なんて簡単にぶち込まれます。
そういったベースの上で、度を越えないことを各人が実質義務付けられている状態と、「ばれなきゃわかんねーよ」的な文化な日本では自ずから事情が異なってきます。20歳前の大学生を一気飲みで殺したり、どう考えても車で来ている客に酒を提供する居酒屋が跳梁跋扈する状態で「自己責任だから」という理由で大麻を解禁するのはちょっとイヤ。
もうちょっと各国の解禁による結果が見えてきてから追いかけても遅くはないんじゃないかと思っています。今すぐやりたかったら外国に行くという手段があります。ただ、大麻が違法なことで犯罪の入り口に入ってしまう人がいる、というのも(もちろんその逆の、合法化で大麻が麻薬のはじめの一歩的役目も)あるのかもしれないので、そういった部分の評価というのもちゃんとしなければいけませんね。