SI業界の労働は正常化しつつあるのでは

標準化された決まりごとがある、ということだけでも物事は多少動いていくのかな。
ISO9000シリーズやISO14000シリーズが意識されるようになって、ISMS認証やEMS認証やその他諸々が契約するのに必要になって、という形で少しずつ、現場の状況も変わってきます。
もちろん、こういうのは形骸化しがちなものなんだけど、認証を取るために、形だけでもきちんとした会社の体制を作ることが必要です。だから、ほとんど人足寄場のような偽装請負中心な会社もきちんとした形を作らざるを得ないし、発注する方の会社も発注先がおかしくないか厳しくチェックされて来ているから、働いてくれるなら何でもいいとは思わなくなってきています。
今の発注元の会社の社員さんたちは有給を使った連休を取らないと怒られるし、昔は終電当たり前だった残業も厳しい手続きの元、管理されている。当然、効率よく仕事をしろよというお達しでもあるわけだけれども、こうやって管理することで、業務にかける人数が適正か(この場合は少なくないか、だけだけど)どうかのチェックが行われることで、無茶な契約もしづらくなる。現場では社員さんがいないと居残り出来ないから、無理難題を押し付けると帰れないのは自分達、みたいな。これはISMSのよい副作用かもしれないけれども。
一昔前、銀行の人は始発で来て終電で帰るのを厭わない人が結構いた。現場で18時以降冷房が切れるから何とかしてくれといったら「7時からついているから早く来れば」と言われたことがあるんだけど、いわゆる一般の生活パターン(子持ちの人なんて朝早く来れなかったりするよね)を無視することは社会としては効率的ではないのではないかな。そういうのを無視することでインセンティブを得られる自身に対して、全然そんなものが無いこちらへ多少配慮してもいいものだと思うんだけど。
ともあれ、そういう話も次第に薄らいできています。今、不況で仕事が少ないという点もあるのかもしれませんけれど、頑張って定時に帰ろうという風潮は強いです。
偽装請負じゃないことも厳しくチェックされるから、勤怠そのものに文句をつけることはないし(もちろん時間が違うと効率が悪いから向こうの定時にあわせて働いているけど)、休みも作業に問題さえなければもちろん何も言わない。俺が帰るまで帰るな的雰囲気など微塵も無い。工数がおかしいと社員の勤怠がおかしくなるから現実から乖離したものにはなりづらい。
とはいえ、不況で仕事が無い、というのはどーんとまとめて契約するベンダーの仕事にははねている。某I社は相変わらずUSとJPの間で仕事と利益の関係が問題になりそこかしこでプロジェクトが止まっている。どうしてもベンダー同士で入札安売り競争になってしまうからねえ。でもそれは自分で自分の首を絞めている。もっとも、利益が出ないのはSEに力が足りないということも多々ある。自分達の見積もりに自信がもてないのであれば仕方がないけれども、そうでなければ実力相応で値段が変わってくるんだよね。
ベンダーが苦しいとその下にいるパートナーも苦しい。トラブってもお金がないから増員できないといって下に仕事を押し付けるベンダーなんて存在価値は薄い。取引先の口座の問題で直契約できないといってベンダー経由になることが多々あるのもこの業界がなかなか上手く回らない要因かなあ。実績があっても小さいとか、優秀だけど実績が少ないとかでシャットアウトされちゃうからなあ。
大会社のシステム子会社系SIerはお金の出所がきちんとしている面で、少しずつ正常化されつつあるように思える。そこにいるお荷物社員のおかげでそれなりに余計なコストはかかっていると思うけれども、目先のそういうコストを最小にすることだけが仕事全体のコストを最小化することではなかったりするからね。一方で、ベンダーは少し厳しい。一旦契約したらお金が増えることがないから会社グロスで融通することが必要なのに、最近はプロジェクト単位で利益を求められる。このへんは大手ベンダーが自分達が何者であるかをもっと強く意識して、その役割に自覚的になるべきなのかな、と思ったりします。まあ、雇われ方の勝手な言い分ではありますが。
まともに働ける方に人が流れていくと、そうでないほうも正常化せざるを得ない。インチキな会社は少しずつ淘汰されて、必要な人は再編された会社に吸い込まれていくだろうし、業界を去る人もいるだろう。いずれにしてもベタベタな仕事をする人は減っていくんじゃないかと思っています。特別な仕事ではなくなったIT業界がこれからどういう方向に向かうかはまだ見えていないけれども、3Kとか7Kとかいわれる世界ではなくなっていくんじゃないかなあ。