コンテンツで収入を得ていける仕組みをみんなで考えよう

ちょうどいいタイミングで記事が出たので下記の続き的に。
前のエントリ:「広告収入で無償サービス」の時代はそろそろ終わりかな? - novtan別館
ここにも書いたけど、i-mode的な課金システムってのはかなり優秀だと思う。手続きの簡便さと徴収の仕方が最高だ。でも、PC上のウェブで実現するのは難しい。それはインターネットのインフラがオープンすぎることにも起因している。もちろん、そうでないインターネットなどインターネットではない。
僕たちはインフラにはそこそこお金を払っているんだよね。インターネット接続プロバイダや携帯電話キャリアには。でも、コンテンツにはあまりお金を払わなくなりつつある。
DVDが普及する前はビデオソフトを買う人ってあんまりいなかったんじゃないかと思う。一方でCDは買っていた人が多いでしょ。大きな違いはコンテンツあたりの値段かなあ。音楽のポータビリティーウォークマンで改善されてからこの方、人が音楽に費やすことが可能な時間が増えた、ということにも起因しているかもしれない。そういう点では今の携帯電話や携帯端末のムービー再生性能は新しい再生インフラなのだから、もっとソフトが売れてもいい…のかな。そうじゃないかもしれない。音楽というコンテンツは実は能動的にも受動的にも楽しむことができる。BGMってのは意識しなくてもいいけど、BGVって受動的にならないようにも思えるし。
話が逸れました。とりあえず、そういう環境の中で、どのようなコンテンツがどのように消費されていくか、まだ先は見えづらいのかも。

コンテンツ産業を取り巻く環境が厳しさを増している。無料で楽しめるコンテンツがネットにあふれ、「コンテンツはタダ」と考える人も増えている。

JASRACシンポジウム:“タダが当たり前”の時代、コンテンツ産業に起死回生の魔法はあるか (1/2) - ITmedia NEWS

最近の某エントリでも槍玉に挙げたけど、コンテンツを作っている側ですらコンテンツにどう価値を置くかというのをイマイチ考えていない部分もあって、有望なビジネスモデルをいろいろと食いつぶしてしまっているんじゃないかと思うんだけど。少なくとも、今まではある程度広告収入によるタダモデルはうまくいっていたけれども、それって成功し始めると逆に広告の価値に広告主がシビアになってくる部分であって、広告を出してもらえる対象が絞られてきちゃうかもしれない。だから、「コンテンツはタダ」という認識が広まっちゃったのはここ5年くらいの痛恨の戦略ミスかもしれません。

川上会長が重要視するのは、MMORPGアバターなど、サーバ型のコンテンツサービス。アジア圏ではスタンドアローン型ゲームソフトの海賊版が跋扈(ばっこ)して正規品は売れないが、MMORPGは仕組み上コピーしても意味がないため、ユーザーがお金を払っているという。

JASRACシンポジウム:“タダが当たり前”の時代、コンテンツ産業に起死回生の魔法はあるか (1/2) - ITmedia NEWS

収益を上げていこうという企業の経営者としての考え方としてはとても真っ当なんだけど、消費者にとっては「お金になるサービス」=「欲しいサービス」ではないんだよね。
順序が前後するけど、そのことを踏まえると、

「CDやDVDに入っているデータそのものがコンテンツであるという考え方は古い。DRMは破られる。コピーされないコンテンツをどう作っていくかが重要だ」

JASRACシンポジウム:“タダが当たり前”の時代、コンテンツ産業に起死回生の魔法はあるか (1/2) - ITmedia NEWS

っていうのは、あくまで「企業としての論理」でしかないんだよな。確かにデータそのものがコンテンツである、というのはいろいろな問題をはらんでいる。でも、違うんだ。今までは「メディアこそがコンテンツ」であったんだ。それが「データこそがコンテンツ」になったんだよね。そしたら「メディアが売り物」というわかりやすいビジネスが崩壊してしまった。
ここでいう「コピーされないコンテンツ」ってのは言い換えると「商売になるパッケージ方法」であって、コンテンツそのものを指していない。つまり、でも僕たちが求めているのはパッケージなんて何でもいいんだよね。ネットゲームなんかはたまたま欲しかった人にはマッチしたし、今までのRPGとかとは違う楽しみ方ができた。でもオフラインで腰をすえてやるゲームもやりたいわけだ。NDSがきちんとゲーム機としての地位を確立しているのはそういうことで。

物心ついたときからネットに親しんで育った人には、無料のコンテンツとしか接しない傾向があると、砂川准教授は指摘する。「コンテンツを違法コピーする手段ができ、お金を出したものと差がなくなってきている」(ドワンゴ川上会長)ことも背景にあるようだ。

JASRACシンポジウム:“タダが当たり前”の時代、コンテンツ産業に起死回生の魔法はあるか (1/2) - ITmedia NEWS

ちょっと一つ忘れている気がするけど。物心ついたころからテレビがあった僕ら、特にビデオが登場してからのことしか知らない人は「動画は基本的に無料」みたいに思っていたりしないかな。だから、ネットで動画が無料というのも基本的に当たり前なんだよ、と思ってしまっていたり。
これは、ネットをメディア的に扱おうとして宣伝してきたプロバイダとかが助長した風潮でもある。冒頭に書いたけど、インフラには金出すんだよ、みんな。

だがすべてのコンテンツが売れなくなったわけではない。岸教授は「EXILEのCDアルバムはすごい勢いで売れている。良いものはみんな買う。コンテンツの質が落ちているから買われなくなっているという側面もある」と指摘する

JASRACシンポジウム:“タダが当たり前”の時代、コンテンツ産業に起死回生の魔法はあるか (1/2) - ITmedia NEWS

ここは定量的に測るのが難しいところでもある。もしかしたら、今までがおかしくて、質の低いコンテンツが無駄に買われていただけかもしれないんだよ。

菅原常務理事は「タダと言っているコンテンツは実はタダではない。ユーザーは通信料は払っている。従来からものには流通コストが含まれていた。流通コストとコンテンツにかかるコストを整理して認識する必要がある」と話す。

JASRACシンポジウム:“タダが当たり前”の時代、コンテンツ産業に起死回生の魔法はあるか (1/2) - ITmedia NEWS

今のインフラって、通信料とも言い切れないんだよね。ほとんど定額だし。そして、本来あるコンテンツの価値からするとすずめの涙に過ぎなかったりする。別に従量課金である必要はないけど、インフラからコンテンツにお金が流れる仕組みは必要だよね。

堀社長は、過去の番組のネット配信には賛成だが「お金を払いたくないと言っている人がいるようであれば産業にならない」と指摘し、過去に作ったコンテンツにも対価が支払われ、十分に仕事が成り立つと分かれば、制作者は将来に向けて作品を作る意欲がわくだろうと話す。

JASRACシンポジウム:“タダが当たり前”の時代、コンテンツ産業に起死回生の魔法はあるか (1/2) - ITmedia NEWS

このへんは難しい。著作権70年論争で言い古されたフレーズと同じようにも聞こえてしまうから。
一見不思議なこの考え方が成立してしまうのは、有料配信⇒P2P横流し、みたいなことを考えているからかな。その点については僕は最近ちょっと異論があって、正当にかつ簡便にコンテンツを取得する手段が提供されれば(よっぽど高価でない限りは)それなりにお金を出す人が出てくるんじゃないか、と思われるくらいはP2Pの違法性と問題点は知られてきたんじゃないかな、と思っていたりします。使い古された言い訳としては「どうしても見たいコンテンツなんだけど正規に入手する手段がないから仕方なくP2Pで」というのがあります。言い訳ができることで実施のハードルってのは下がってしまう。「正規に入手できる手段があるのに行わない」後ろめたさを感じさせることができないとダメなんじゃないかなあ。
もちろん、それですべて解決するなんて思っちゃいないけど。

先のエントリで貰ったコメントの中にもあったけど、ウェブは気軽にコンテンツを購入することに対する決済手段がまだまだ未熟なんですよね。プロバイダが介在するというのも難しいだろうし、単純なのは多少強引でもいいからEdyリーダーみたいなのを普及させてしまうことだろうけど、それで十分とも思えないし。
サービスに対する課金とコンテンツ一つ一つに対する課金は違う仕組みが必要だろうし、それを一緒にしちゃうのもある意味インフラによる囲い込み的なものが発生するし。i-modeだって出た当初は勝手サイトの課金システムというのは結構課題だった。Suicaオートチャージみたいな仕組みの電子マネーのウェブ版とかがあればいいのかな。それはそれで結構セキュリティーが危険そうな香りはするので実体を伴っていたほうがよいな。携帯はそこに端末(SIM)があるから成立するシステムではあるわけで。やっぱりFelicaみたいなものをうまく使うインフラが普及するのが一番っぽい。