IT業界と有給休暇

個人の体験談みたいなものです。

ただ、日数だけの問題ではありません。制度上は存在しても、利用できるかどうかが問題です。

有給を申請したら主任に睨まれたでござる の巻 - 非国民通信

いわゆる1人月というのは大体20人日で計算されているはずなんですが、じゃあ何を何時間やって実績がどのくらいで純粋な作業単体での超過時間がどのくらいで、というようなかっちりとした計算がされているかというとそうでもない現場のほうが多いですよね。さて、どのくらい働けば有給休暇が取得可能になるのか。
純粋に考えたら、本来これではいけません。うちの会社の場合、夏休みも含む有給休暇が年に20日ありますから、1人月というのは18日強しかありません。だから、本来は18日でできる作業を1人月と定義し、残業して有給をとる余裕を作るような事態は回避しなければ有給という制度は利用できないことになってしまいます。でも、そんな見積もりする現場ないよね。だから、「やることがない」状態にならないと有給って取れない。でも、やることがない=非効率な状態だ、と定義されてしまうと現場を効率化して20人日分全員が稼動しているようにしろ!となってしまう。
しかも、20日って毎月ちゃんと取ってないと「後3ヶ月しかないのに10日もあまっているよ…」ということになってしまいます。だから、消化しきることは大変難しい。
もう一度考えてみよう。SES的なイメージで。お客さんが1人月は20人日だと思っている場合、労務としては20日分の仕事が与えられるはず。まず、この仕事量が実際に何日分かというのが個人の能力に依存してしまう。だから、これを18〜19日でこなすことができる人は有給を取れるし、20日かかる人は取れない。というのは正しいのか。実際はバッファ込みで20日の作業でなければいけないのではないか。
別の視点。20日分の作業を15日でこなすことができたとすると、5日有給が取れるかというと今度は有給が足りない。であれば、損しないためには適当にサボりつつ18日かけるか、もっと仕事量を増やす代わりに時間単価を上げてもらう必要があるわけだ。
このへんのバランスをとるというのが神業であるのは同じような仕事をしている人であれば感覚的にわかってもらえると思います。
有給をきちんととる、ということは、つまりこなせる仕事量の中に有給がきちんと織り込まれているか否かの問題のはずなのに、実際にはとるための努力の結果として取れる、という状態になっている。これは本当はおかしいです。効率化ってのは単位時間当たりの仕事ができる量を増やそうってことのはずなんだけど、無駄な時間をなくそうに変換されて適用されてたりしますよね。請負だって100人の仕事を95人でやれば利益が出る、というのは足りない5人分の「時間」をがんばって捻出しようぜってことじゃなくて、時間当たり5%の効率化を図ろうということ。ITで不毛なのは、効率化に成功するとその後の算出基準が効率化後の仕事量になるので次の仕事でさらなる効率化ができないとジリ貧になっていくことなんだけどね。余談。
というわけでだ、仕事がんばって有給というのはせいぜい自己都合によるまとめて取得のときだけで、後は計画的に取得をすることを織り込まなくてはいけないはず。強制的にとらせる事も含め。なんだけど、そういう感覚ってなかなかない。有給が病欠のバッファになっていたり、ひどいところだと遅刻早退のバッファになっている部分があるからかもしれないけれども。
有給とったから仕事が遅れました⇒じゃあしょうがない、くらいの文化じゃないとまともに仕事をしている時期に有給を消化しきるのは難しいかもしれない。仕事が暇なときに時間がもったいないからとるための制度じゃないよね。
もっとも、僕らの仕事に有給休暇という制度そのものがマッチしているのかということには疑問があるけれども。大体一年の仕事の流れが決まっていて、繁忙期と閑散期があり、繁忙期の仕事をこなすことができるための社員がいると閑散期は休暇がとりやすい、というような世界でもっとも有効。盆暮れに工場が止まる製造業みたいな。業務の効率化と有給休暇は相容れないのかもしれないね。そういう意味では、有給休暇のあまりを金に換算することは必要かもしれない。効率化を果たしたことが会社の収入に、そして個人の給料に跳ねないのであれば、効率化のインセンティブは何にもなくなってしまうよなあ。効率化によってバッファがなくなり、有給休暇の取得余地が狭まったとしたら、それは実稼働時間の時給が落ちたということを意味するわけです。
仕事の利益を上げていくためには無駄は省いていかなければならない。でも省いた無駄が適切に還元されないと無駄を省くモチベーションが低下する。
あと、無駄が本当に無駄なのか、というのは検証されなければならないよね。今ある無駄が実際には有給取得余地だったり教育のための時間だったりしたとしたら、それをなくすことは教育の放棄に近い。
有給があまったら金に換えることを義務付けたら無駄に見えるのが実際には有給取得余地である場合にそれを効率化とか言われることは減るのかもしれないけど、無駄に残業して仕事を終わらせて有給とって残業代丸儲けみたいな人にどう対処するか難しいかも。。