誘導尋問

こういうのは誘導尋問に当たるというのを理由つきで述べた後の例としてハスカップ氏が上げているこれ。

例:全面可視化に賛成なのに民主党案に無条件に賛成しないのですか?
 (全面可視化に反対ですか賛成ですか中間で条件付きですか?)

最近の司法研修所では,「誘導尋問」の範囲が広がったのですか?: la_causette

ハスカップ氏の記述における括弧の中身が本来あるべき質問の例で、中間で条件付という選択肢があることを「明示する」ことが重要。なのにそれをせず、しかも、「あなた全面可視化に賛成なんですよね?であれば民主党案に賛成するのが当然ですよね」というニュアンスをかもし出す、という二重の罠がこの例のポイントなわけですな。民主党案には賛成できない、というと全面可視化に賛成「なのに」反対とはどういうことだ、と。

それを受けて小倉先生曰く

で,矢部教授が「質問者の意図がミエミエの姑息な誘導尋問ですね。」といって回答を避けている私の質問は,
野党の共同提案にかかる刑事訴訟法改正案には無条件で賛成されますか?
というものなので,これは「ハスカップ」さんの定義する「誘導尋問」にはあたらないといえます。

最近の司法研修所では,「誘導尋問」の範囲が広がったのですか?: la_causette

なんだけど、例と変わらなくない?「全面可視化に賛成なのに」がないからいいのかな?でもハスカップさんの言う正しい質問は括弧の中のあり方のことを言っていて、「無条件で賛成されますか」という設問がそもそも誘導尋問的だということなんですよね。

別に「『はい』か,『うん』としか答えるな」といっているわけではないので,「はい」と答えてもいいですし,「いいえ」と答えてもいいわけです。そして,「いいえ」と答えた場合には,「ここをこう直せば賛同できる」ということを理由として付することもできます。

最近の司法研修所では,「誘導尋問」の範囲が広がったのですか?: la_causette

ということを一見出来ないかのように見せかけるのが誘導尋問なんでしょ。あと、これだといいえと答えた場合も賛同できる理由が絶対に必要と思えるような誘導を行っていませんか?本来自由回答であれば、賛同できない理由をもっていいえとすることも可能ですよね。何かにダメ出しをするときは必ず対案がなければならないとするのは対案厨と言ってもよいと思いますけど、そういう空気を感じなくもありません。

また、野党の共同提案への賛成と全面可視化に賛成するこという二つの命題は内容としては関係はあるにしても、ここでの設問として直接結びつける必要性はありません。

たとえば、「野党の共同提案へ賛成するのに全面可視化には賛成しないのですか?」だとしたらこれは設問ではなくて疑問ですよね。内容が矛盾しているから。そしてその疑問を抱くことは正しい。
でも「全面可視化に賛成するのに野党の共同提案には賛成しないのですか?」は本来疑問ではない。包含関係としては共同提案は全面可視化案の一つでしかないわけですからね。それなのに、前者の疑問と同じ構造をとることで矛盾があるように感じさせることが出来ます。もちろん「はいかいいえで答えてください」という設問でなければ留保付の回答もできますけどね。