DINER / 平山夢明

ダイナー

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平山夢明の作品は、そもそもホラーなのか、ということをいつも思って読んでしまう。確かにスプラッタな描写、どう考えても逝ってしまってると思えない登場人物のセリフの山なんかを見るとジャンルとしてはそうなのかもしれないけれども。でもその妙に乾いた描写が内容だけ見れば確かにぐちゃねちょきもちわるいのだけど、どこか客観的で、理性を崩壊させる類の恐怖と言うよりは、人間の理性が受け入れてしまえることそのものが恐怖みたいな、そんな印象を受ける。
ともあれ、そういった一連の作品とは一線を画すようなのがこれ。確かに展開される世界の暴力的でナンセンスなところはまごうかたなき平山世界なんだけれども、これはちょっとしたミステリーであり、成長物語であり、純粋にエンターテイメント小説。
主人公(というより狂言回しだけど)が放り込まれ、働かされる、殺し屋しか来ないレストランに集うおかしな人々が繰り広げるおかしな世界はまるで舞台を見ているかのようで。そういう風にしか生きられない人の悲しさを書かせたらまたこれが妙に心に残るわけで。
平山世界にはありそうで、なさそうで、やっぱりあった結末でなんだかほっとしてしまう。現代を舞台にした、ともいいづらいけど普通のスプラッタ風味のファンタジーどたばた劇を存分に楽しめる。普通?何かがおかしいな…