糸井メソッドは本当に適用可能か

今更ながらちょっと話題。
原発関連情報の取捨選択に役立つ、糸井メソッド - Togetter

まとめでは原発関連情報の、となっているけれども糸井さんの発言の文脈がわからないのでそのへんは先入観なしに行きます。

こういうのもケースバイケースといってしまえばそれまでなんですけれども、差し迫った問題か、そうでないかによっても話が異なりますよね。「逃げなきゃ死ぬぞ」と「きちんと情報が集まるまで動くな」は前者のほうがより脅かしているほうだと思いますが、正しいのはこっちだったりします。

この手の簡易的な判断基準で有名な言葉を幾つか上げてみましょう。Wikipediaより

オッカムの剃刀

「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くの実体を仮定するべきでない(Entities should not be multiplied beyond necessity.)」
つまり、シンプルに説明がつくのであれば、それ以外の不要な説明は削ぎ落してしまいましょう、ということ。注意しなければならないのは、これは真実を判定する基準ではないこと。何事かを証明するときには仮説を立てますが、意味のなさそうな仮説を取り上げないことで思考を節約する、ということですね。

ハンロンの剃刀

「無能で充分説明される現象に悪意を見出すな(Never attribute to malice that which is adequately explained by stupidity.)」
オッカムの剃刀からのインスパイアなので、これも同種の判断基準となりますね。しかしながら、ハインラインの剃刀というのもあるらしく、これは
「無能で充分説明できる現象に悪意を見出してはならない、しかし、悪意自体を除外してはならない。(Never attribute to malice that which can be adequately explained by stupidity, but don't rule out malice.)」
というものです。つまり、これも悪意があるかどうかそのものを判断する基準には成り得ません。無能で説明できるからといってそこに悪意が内在しないとは限らないわけです(そもそもその無能を配置・放置したのは誰だ…)

クラークの三法則

1.高名だが年配の科学者が可能であると言った場合、その主張はほぼ間違いない。また不可能であると言った場合には、その主張はまず間違っている。
2.可能性の限界を測る唯一の方法は、不可能であるとされることまでやってみることである。
3.充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。
最後のが有名ですね。でもここでは第一法則が重要でしょう。元々は最初のが独立して述べられていたようです。第一法則が含むところは深いです。必ずしも「年配」というところがポイントではないと思ったりします。置かれる環境かな?

では糸井メソッドは?

「よりスキャンダラスでないほう」
「より脅かしてないほう」
「より正義を語らないほう」
「より失礼でないほう」
「よりユーモアのあるほう」
これらはすべて、語り口の問題です。内容については一切評価していないといっても良いほど。では、これが何を意味しているのか。個人的な見解としては「見知らぬ人を信頼する基準」であると思います。これって、もしかしてこれだけ見てると典型的な「詐欺師に引っかかる」パターンじゃない?

実際には、内容を評価しているんだと思うし、XXの剃刀的なフィルタリングとして、「スキャンダラス・脅し・正義・失礼・ユーモアの欠如」が見られるものをまず排除する、ということなんだろう。(ユーモアは判断基準に入れるべきかどうかというと僕は否定したいけど)
なので、この言葉だけが独り歩きする、ということはイマイチよろしくないことなんじゃないかなあ。

人の意見をどう参考にするか

自分の中に確固たる判断基準がないものについて、判断するのは難しいですよね。そのことについてとにかく学ぶしかない。これも内容評価とはちょっと違うと思いますが、僕が常に思っていることは「撤回できない判断は表明しない」ということ。表明しちゃうと自分の中で絶対的な真実となってしまう(なぜなら批判されたくないからとか理由はいろいろ)ということが一番の判断阻害要因です。ま、僕なんて意見をコロコロ変えてしまう人なので適当に表明しちゃってますけれどもねw判断を変えるに足るエビデンスがでたらさくっと乗り換えますw
でもそれは判断できる分野の話だからあとは人を信じるしかない。そういう時に糸井メソッドは結構有用なんじゃないかと思ったりもします。盲信じゃなければいいんじゃないかな。