読んでなくてもヤバくない名作?SF小説10選

こんなのとかこんなのが話題になっていたので尻馬に乗ってみる。
僕はSF読みではあるけどいわゆる筋金入りでもなく、読んでみてよかった作家のものをたてつづけに読む事が多いので、カバー範囲はあまり広くない。世に名作SF小説は数多あるけれども、愛すべき駄作も沢山ある。完結してないシリーズ物もある。特別区別をすることもなく、個人的な好みと思い出だけで紹介してみようと思う。

1.「ニューロマンサーウィリアム・ギブスン

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)

中学生の時、友人に「読んでみろよ」と渡されたこれがなければ僕にSFの扉が開くことはなかったかもしれない(当時は本好き中学生が辿る王道として吉川英治とか山岡荘八の読破に勤しんでいたわけで)。
もっとも「なんだかカッコイイけどよくわからん」という感想だったのは秘密だ。

2.「暗闇のスキャナー」フィリップ・K・ディック

スキャナー・ダークリー (ハヤカワ文庫SF)

スキャナー・ダークリー (ハヤカワ文庫SF)

新訳版は読んでない。映画化もされたけど見てない。端的に言って傑作ではないと思う。SFですらないかもしれない。こんなのを中学生の時に読んでしまったらおかしなことになるのは明白である。最初に読んだディックが「ザップ・ガン」というクズ中のクズ(ある意味)で次がこれ、というのは困った話である。ディックを楽しむのであれば、短篇集から読むべきだとは思う。
まだ人間じゃない (ハヤカワ文庫 SF テ 1-19 ディック傑作集)

まだ人間じゃない (ハヤカワ文庫 SF テ 1-19 ディック傑作集)

こいつの表題作はすべての人類が読んでおくべきだと思っている。

3.「エンダーのゲーム」オースン・スコット・カード

エンダーのゲーム (ハヤカワ文庫 SF (746))

エンダーのゲーム (ハヤカワ文庫 SF (746))

映画化されるんだってね。成長物語としてはあまりに過酷で切ない。といいつつ凄さを見せつけられるところが鼻についたりもする。主人公の物語とは別の、兄弟たちの物語がウェブ社会の一つの可能性を示しているように見えるあたりが今となっては面白い。ともかく、衝撃のラストまでノンストップで読める傑作。

4.「宇宙消失」グレッグ・イーガン

宇宙消失 (創元SF文庫)

宇宙消失 (創元SF文庫)

現代ハードSFと言えばイーガン、というくらいで、単なるSFマインドだけでは理解不能、ストーリーの妙よりもハードSFネタ一本勝負な感じなので物語を楽しむ向きにはあまり向いていないかもしれない。量子論における観測の結果を人為的に選択できたらどうなるか、と問われてなんのこっちゃと思う人はお断りである。イーガンも短編から入ると味わい深いんだけどね。

5.「暗黒星雲のかなたに」アイザック・アシモフ

暗黒星雲のかなたに (創元SF文庫)

暗黒星雲のかなたに (創元SF文庫)

アシモフの諸作については語るまでもないので思い出深い本を。銀河帝国興亡史の前史、という設定だけれども、そんなこと関係なく読める普通中の普通のSFという感じで、「この調子なら全作行けるぜ」と思いを抱いた小説ですね。なんというか、サービス精神が旺盛なんですよね、アシモフ博士のSFは。SFとはなんぞや、と問われた時に一つの答えではあるんじゃないかと思う。
アシモフといえば読みたいのはこれなんだけどなー。

6.「コンタクト」カール・セーガン

コンタクト〈上〉 (新潮文庫)

コンタクト〈上〉 (新潮文庫)

コンタクト〈下〉 (新潮文庫)

コンタクト〈下〉 (新潮文庫)

どちらかというと学者先生なセーガンですが、読んだときはちょうど映画化される時期だったというのもあって結構な話題。セーガンといえば「テラフォーミング」論。なおどっかの漫画と違ってゴキブリ人間とか出てこないけど。あの無人探査機パイオニアボイジャーにも関わっています。ニセ科学についての著作も有名。
さて、コンタクト。宇宙からの電波を解読するSETIが実際にメッセージを見つけてしまったら、という設定はワクワクするよね。そこに隠されていた宇宙船と思しき設計図。これをめぐって政治やら宗教やらがアレしてアレしちゃうあたりがね。彼が生きていたら原発事故についてどうコメントするんだろうか。

7.「リングワールド」ラリー・ニーヴン

リングワールド (ハヤカワ文庫 SF (616))

リングワールド (ハヤカワ文庫 SF (616))

地球の公転軌道と同じ大きさを持った帯状の人口建造物!という設定だけで丼三杯はいけますよね?いけない?あなたSF向いてないんじゃない?
てな感じで大ネタ一発。これを創造しただけでもニーブンは神。以上。

8.「ブラッド・ミュージック」グレッグ・ベア

ブラッド・ミュージック (ハヤカワ文庫SF)

ブラッド・ミュージック (ハヤカワ文庫SF)

端的に言うとパラサイト・イヴ人類補完計画みたいな。何言っているんだかわからないと思うが以下略。
ベアは80〜90年代ハードSF界の旗手なのだけど、00年代に入ってからあまり邦訳がないのが残念(理由はあるのかもしれないけど)。

9.「スタータイド・ライジング」デイヴィッド・ブリン

知性化シリーズの続編まだー?
人類により知性化されたイルカをクルーにしたオンボロ探査船が見つけてはいけないものを見つけちゃったせいで列強異星人たちに追われてさあ大変!というお話。宇宙航行種族としては新参者の人類の更に従属種族であるイルカたちはもうやられっぱなしですが逃げる逃げる。このイルカたちの物語はその謎が明かされないまま一応続編で終わっているけれども、謎の明かされる完結編はよ。
とにかく魅力的な異種族たちが次々に登場してこれぞスペオペ!みたいな大騒ぎな作品群。SF的想像力は必要だけど、第一級のエンタメ。映画化はよ。

10.「所有せざる人々」アーシュラ・K・ル・グィン

資本主義社会の内在する問題と、逆に(真の)共産主義あるいは理想主義の欺瞞を書きだした問題作、という部分はともかくとしてタイムラグのない恒星間通信「アンシブル」(そういえばカードの作品もそれを受けて同名の通信技術を使用している)が発明されている、というのがこの作品の(SFガジェット的な)重要性である。僕達にとってインターネットの登場はそれに近いものがある。世界の緩やかな改革が始まっているのはコミュニケーション手段の発達によるものだということは自明だろう。

こうして10冊選んでみると結構難しいね。