岩手県議の自殺は「メディアスクラム」の結果なのか

死者に鞭打つのもアレなので当人の行為には直接触れないけど、気になった話。

それがここまで盛り上がってしまったのは、ネットの炎上を発端に、いわゆるメディアスクラムが、形成されてしまったから、ではないでしょうか。

ネット炎上で岩手県議が自殺との報に触れて:クロサカタツヤの情報通信インサイト - CNET Japan

メディアスクラムってのもなんだかバズワード的なんですが、ウェブを発端とした炎上案件にマスメディアがガソリンぶっかけて爆発させる例はまあある。ただ、大抵の場合、マスメディアがニュースバリューがあるとは判断するためにはそれなりの事案である必要があるし、真実性に欠けていたらウェブ以上に問題になるのは間違いないところですから、立場ある人の犯罪告白なんてのは格好の標的ということです。

しかし、ネットにおける議論の影響力が、ネットの外部にも伝搬していく時代においては、もはや社会全体の課題であり、ネットも否応なくその一部として俎上に載せられるということです。
 
残念ですが、牧歌的な時代は、もはや過ぎ去ったようです。今後は、ネットにおける自由な議論の限界を、社会制度も含めて批判的に検討せざるを得ない状況なのでしょう。

ネット炎上で岩手県議が自殺との報に触れて:クロサカタツヤの情報通信インサイト - CNET Japan

僕も昔から何度も「ウェブの自由」ってのは終わりだ終わりだと書いてきて早や5年くらい?経ちました。牧歌的な時代なんてとっくの昔に過ぎ去っているからこそ、問題のある発言が広く伝播して炎上してメディアが(他にやることないから)叩くわけで。
勘違いしてほしくないのは、これが「自由な議論」の結果ではないってこと。これも何度も言っていることですけど、「自由」ってのは紐付きなんです。こういう問題は自由と言うよりは無秩序というものに近い。批判的に検討せざるを得ないってのはそのとおりだけど、他人のバカを糾弾することを制限できたとしても、バカバカであることを告白することを制限することはできませんし、そのことによって炎上してしまったとしたら、それは誰が悪いのかという話です。制限すべきは本題とは関係ない部分について(例えば行為ではなく属性を叩くとか)の誹謗中傷や、物理的なものを含めた嫌がらせ行為とか、そういうものです。議論の部分じゃない。
こう言うとなんかむやみに人を叩く行為を肯定しているみたいだけどそういうことではないです。でも、飲食店だったら無銭飲食にあたる行為を自慢気に正当化するような人がいたとして、それを糾弾せずにいれるか、と言われると自信ないよ。冤罪の余地すら無いわけで。

不用意な告白が結果として当人を死に追いやった、というのは事実。それが社会的制裁の結果と言えるのかどうか。報道されなければよかったのか。であれば、報道の使命とは何なのか。炎上しなければよかったのか。であれば、目の前にある犯罪行為を常に見て見ぬふりをするのが正しい態度なのか。
不幸な結果だけを見てウェブの限界を語るというのはどうにも取ってつけたような議論であるように思えます。

もちろん、人間は常に正しい行いだけをできるわけでありません。そこから逃れられない以上、社会としては寛容をどのように適用していくかというのが一つの問題になります。おかしな行為についてはおかしいという声が上がるべきだし、反省の弁に対して十分な妥当性があればそれを受け入れるべきだと思うわけです。多分それだけの話だと思う。それが可能でないのであれば、ある種の言論は規制される必要が有るかもしれません。

曖昧な話になっているのは僕自身このことについてどこまでどうするべき、という態度を決められないから。