ハンニバル・ライジング / トマス・ハリス

薄い。薄すぎる。希代の寡作作家にしてハンニバル・レクターの生みの親のその筆致はあくまでこの作品がインターミッションであることを示すかのように表面的だ。
ここには何故怪物が生まれたかは書かれていない(帯の煽りとは裏腹に)。ただ怪物はそこにあり、それもまた人間であることが示されているに過ぎない。これは物語の一断面であり、言うなれば記録映画だ。

ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)

ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)

ハンニバル・ライジング 下巻 (新潮文庫)

ハンニバル・ライジング 下巻 (新潮文庫)

いや、面白いことは面白かったんですけどね。やっぱり薄かった。新潮文庫は活字が大きくなってるから上下巻合わせてもボリュームは結構少ない。それにしてもここからレッドドラゴン(や、語られないそれ以前)のレクター博士になるのに何があったのかというのが満たされない点として残りますね。