考えるきっかけを無駄にしない

どこにも言及しないでひっそり。
昨日も書いたし、一昨日も書いたけど、実際の話として、僕は今のタイミングで一部の著作権侵害行為について非親告で立件するように法改正されること自体がよいかどうかは正直わかりません。実態として、同人業界が著作者の目に余るような活動に移り変わってきた(ドラえもんの件とか)こと、グローバル化による商業機会を海賊版が奪っていること、ヤフオクのようなものを利用した海賊版販売が日常茶飯事であること、P2Pでの侵害も多いこと、その辺りを考えると、必ずしも著作者の意思に因らず、法治国家としての示しをつけるため、つまり侵害行為が日常的に行われていることそのものが許し難い問題であると考えていることはそれほど不自然じゃあありません。だから、自主的に規制ができない、回避する仕組みも作れない、という状態を何年も続けていたことに対するこれは必然ともいえるんじゃないでしょうか。
ということは、著作権保持者の意思なんか関係ないんですよ。これは。
反射的に反対を叫ぶ人の気持ちはわかるけれども、じゃあ、いわゆる海賊版の取り締まりをされると困ると思っている人はP2P共有し放題な人くらいなんじゃないかと思いますし、そうじゃない人が危惧をしているのは拡大解釈の話でしょう。で、明確じゃないから反対、と言うのは、やっぱり良くわからない。
もし、対象が明確じゃないまま法制化が進むとしたら、それはその通りだと思います。本丸が海賊版対策である限り、上記に述べたような現状ではその点での法制化を回避するのは難しいかも知れません。だからこそ、そこを重点的にウォッチしなければならないのだけれども、とにかく反対ではそれもままならない。むしろ、上手く線を引かせることができればグレーゾーンは守れると思います。ここが肝心な話で、グレーを黒にしないためには、黒が黒であるという境界線をはっきりと認識することで、つまり侵食されない壁を作ることだと思います。
今回の件で、実際に非親告化されるかどうかはわかりません。反対運動をするのもよいと思います。しかし、今後のあり方として、特に著作物総デジタル化が進む中で、今のままの著作権法ではいられないだろうというのも確かな予感としてあります。保護期間の話もひっくるめて、知財のありようはどんどん変わっていくはずです。今と同じことができるか心配だから、拡大解釈されるかもしれないから、という危惧はもっともだと思います。でも、これだけの反応がありながら、そこから次の著作権法のあり方という議論があまり出てこないことは残念だと思いますし、そういう議論が出てこないことで、あちら側が恣意的に動く余地を与えているんじゃないか、そうも思います。