ウェブ自由主義の敗北

既に、我々は敗北している。何に?現実の世界にだ。
急速なウェブの拡大は我々に何をもたらしたのか。限りない自由の世界への展望か?否、現実からの干渉である。あまりに急速な成功は、現実のビジネスとの融合を余儀なくされる結果を招いた。我々の回線使用料で整備されるはずのインフラは広告料や囲い込み戦略というビジネスによってとって替わられた。もはやそれなしにはインフラは成り立たない。そう、ビジネスに乗っ取られたのだ。
そして、我々の自由な発言は、ビジネスの波と共に押し寄せた一般人によって危機に晒されている。小人のなす…しかし数だけは多い…不善により、匿名は悪のレッテルを貼られ、撲滅されかかっている。小人どもは自らのなしたことが自由への攻撃であることも認識していないであろう。ビジネスに飼い慣らされた消費者は自由への敵であり、しかし、味方でもある。これは我々の戦術的敗北である。
一つの手段としてのウェブは終わりを告げようとしている。結局、Googleのみがウェブから世界を変える権利を得た。これも最終的にはビジネスの世界に過ぎない。現実からの干渉はGoogleといっても例外にはならない。最終的にビジネスにならないことを期待できるわけがない。
現実の浸食度が高まれば高まるほど、規制も、また利権も現実に近づいていく。ウェブが自由だった何かからは結局逃れられないのだ。ウェブが表舞台に出た時が既にウェブ自由主義の敗北であった。Web2.0とはそのことを象徴する言葉であったのだ。ウェブ商業主義によって世界は変わるか。否。ロングテールとは不買運動を無に帰す巧妙な手段であり、マッシュアップとは悪いところを無視させる布石である。消費者が最適な選択をした「気分にさせる」ことが出来さえすれば裏の取引はどうだってよいのだ。ウェブとはもはやこうした欺瞞を支え、ビジネスとして人々から搾取するための重要なインフラなのだ。
もはや、国境を越えた活動はビジネスに寄与しない限り邪魔であり、政治的な活動も同様である。正当な批判も謎の「市井の声」の前ではノイズに過ぎず、商業活動の前では営業妨害であり誹謗中傷である。
ウェブにかつて見た新天地はその急速な発展と社会における重要度のために瓦解した。我々はこのインフラに乗り続け、その中で生きる道を探るのか、別の天地を探すのか、今や選択の時にある。諸君らの選択や如何に。


〜2010年初頭、ウェブ自由主義一派による敗北宣言より〜