刑事罰で業界が崩壊する?

日夜論戦が繰り広げられているところですが、局面は新たな問題…じゃなくて出発点か。
刑事罰は業界を崩壊させるのか: la_causette
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刑事罰は業界を崩壊させるのか」VS「刑事罰は業界を崩壊させ得る」
どちらも可能性という含みを持たせつつ、かたや「崩壊なんてさせない」かたや「現状を見る限り崩壊させてる」という内容になっていますが、そもそも「刑事罰」が問題なんでしょうか。僕の理解している医療問題は、刑事罰の問題ではなく、「本来適用すべきでない(事件として立件すべきではない)ような事案まで事件として扱い、あまつさえ有罪にされてしまう」ことが問題なのですよね。そういう意味で、小倉先生の言われるところの「免責を要求する愚」は正しいと思うし、一方でモトケン先生のところで言われる「普通に起きることまで犯罪扱いにされてはたまらん」ということも理解できます。
最初からこの議論は噛み合ってないんですよね。
それを受けてこういうエントリを書かれている方もいらっしゃいます。

  • 医師を批判しようとするあまり、他の分野に対して見当違いな批判をしている
  • 巨大システムにおいて個は免責されるべきだということを理解していない
  • 例えの自動車事故においても、免責されるべき状況は存在する
  • 結論づけも間違っている
巨大システムによる事故は免責されるべき - 埋立地の記憶出張版

僕はこのエントリのタイトルや2番目の前提には同意しがたいのだけど、それはそれとして、この3番目の「免責されるべき状況」が正しく適用されているかどうかということが今回の問題だと思う。
で、続き。

医師たちが不当に起訴されることを回避するためには,起訴前弁護を適切に受けられる体制,そして,起訴前弁護を担当する弁護人に的確な医療情報が提供される体制が構築されることが有益です。

刑事医療過誤事件と起訴前弁護: la_causette

ちょっとこれがどのくらい有効なのかわからない。そもそも医療側としては通常の業務を遂行していただけで業務上過失致死傷の疑いを掛けられるような状況がある時点でかなりのリスクを抱えていると思うのですよね。だから、これは論点としては「次」のところなんじゃないかと思います。もっとも、「現実」の線でもあります。根本治療にはならないけれども、現状では対症療法も必要ではないかな。そういう意味では、僕は門外漢なんでよくわかりませんが、この小倉先生の提案というのは考えてみる余地はあるんじゃないでしょうか。
もちろん、一方で、

裁判が信頼できるものであるのなら,刑事免責など求める必要ありません.
しかし,仙台の北稜クリニックの事件では,科学的にありえない濃度の検体を裁判の物的証拠として採用し,一人の人間を有罪としています.疑わしきを罰することなく,正しく裁判を受けることが保証されているなら,いいのです.

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という現実もあり、医療側の常識と司法側の認識のまだまだ深い溝が埋まらないとどうしようもありません。ただ、これをもって「だから免責にすべき」というのはおかしい。以前も紹介しましたが、これだけ社会問題になっている以上、司法の側も医療の実態を知るべく運動しているところではあるのですよね。
司法できちんと解決していくにはどうも司法側のリソースも足りないようです。医療司法枠の一定量確保を目指して司法試験合格者数を増やしていくとかそういうのも必要かも知れません。もともと不当な犯罪者扱いが存在しないのであれば不要のコストかもしれませんが、医療を崩壊させないためにはお金が必要だ、というのは多方面の事実から明らかです。あとは国民が納得するかどうかですけどね。
医療というのは人の死やその後の人生を扱う大変シビアで重要な問題です。その現場に余裕がないことが様々な軋轢の生じる根本原因だとすると、俄かには改善し難い状況であるといえます。国民の医学リテラシーが変わっていくとまた違うのでしょうけれども、それも根本ではないですよね。ただ、納得の行く医療業界にするためには潤沢なリソースが必要で、それが望めない(高い医療関連費用を払いたくない)のであれば、それによって起きるリスクは甘受しなければならない。患者側の問題はある程度患者側でも考えていく必要があると思いますが、なかなか難しいですね。
さて、現実的な話として、今必要なのは、先に述べたとおり、医療業界と司法業界が溝を埋めていくことだと思います。デススパイラルを生まないためにもお互い忙しいこととは思いますが積極的に協力し合って欲しいものです。
あ、あと無闇に犯罪者を作ろうとするマスゴミは逝ってよし。