ついにデスマーチもか

ITにおけるデスマーチを語るからには当然ヨードン先生の「デスマーチ第2版」くらいは読んでおかないと資格はないよ、と言うべきところなのだろう。

デスマーチ 第2版 ソフトウエア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか

デスマーチ 第2版 ソフトウエア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか

訳者あとがきでは語源について触れられていつつも、あくまで表象だけをとって言葉を当てはめた、ということは理解できると思う。もちろん、本文に語源であるところのいわゆる「死の行進」に触れられたところはなくて、プロジェクトマネジメントにおけるデスマーチのことしか書かれていなく、かくしてIT業界の戦士(なんていうから突っ込まれるのか?)たちは語源の政治性など気にせず自らのおかれる立場をデスマーチと称するわけだ。語源を知ったら現象がなくなるならよろこんで知るけどね。
さて、上記の「デスマーチ第2版」の5章を見ると卒倒する人がいるかもしれない。

この章から、または、本全体からたったひと言だけ覚えるとすれば、それは「トリアージ(triage)」である。

なんだ、海外でも普通にマネジメントの最適化をトリアージになぞらえるのね。コンピューター殿堂入りの人もいうトリアージ。まあ、実際に何が書かれているかは読んで確かめて欲しいところです。デスマーチにならないための、結果としてみんなが幸せになるためのトリアージ。ここでは要求を切り捨てる、という話だから、危険な話にならないけれども、そこで言葉のもつ政治性が、とか言い出しても別の言葉に置換されるだけかな。概念として便利だから使っているだけ、というとまた批判があるのだろう。
言葉は抽象化されて多義的になったり原義を失ったりすることはよくあることだけど、原義にこだわる、というのも一つの態度としては認められてもいいと思う。
でも、デスマーチみたいなもはや別の意味でしかない単語に噛み付いても、単なる言葉狩りに過ぎないし、これだからIT屋は、とか言っても目の前にあるデスマーチプロジェクトを華麗に片付けてくれるスーパーマンしか信用してくれないのだ、IT屋は。