辻斬り愛好家の実名侍が跳梁跋扈するウェブは恐ろしいのう
なんでこう自爆的なたとえ話が得意なのかよーわかりませんが、こういう方向に行くこと自体が思想を体現しているのがよくわかります、と言ってしまうといいすぎでしょうか。大体、お上に逆らわないように武器を取り上げて身分制度を作り上げてきた過去の制度をたとえ話に使うところがすごい。その上でこれです。
そりゃ,法的責任を事実上負わされることなく,自分のお気に召さない言動をとる人間に私的制裁を加える事実上の地位を偶然に手に入れてしまった人々が,これを手放したくないというのはわからなくはありません。しかし,それによって不当に傷つけられてしまっている人々が少なからずいる以上,一日も早く,法的責任を事実上負わされることなく私的制裁を加える事実上の地位は取り上げられるべきなのです。
現代の「刀狩り」に,「辻斬り」愛好家が反発しても,不思議ではない。: la_causette
なんだよ偶然にって。ウェブってインフラにただ乗りしているだけの利用者(もちろん僕もだが)がいうことではない。しかも「事実上負わされること」はそこら中にあるでしょ。ちょっと架空の駅での犯罪予告するだけで通報されて捕まるわけじゃん。誹謗中傷が簡単に捕まらないのは誹謗でも中傷でもないか、相対的に軽い罪で手が回らんか、いずれにしても身元が特定できないからではないのは脅迫があっさりつかまることから言っても明らかでしょう。しかも、私的制裁を加える云々ということ自体は否定しないけどさ、それって実名侍の辻斬りが捕まらない以上、問題の所在はウェブの構造以前にあるんじゃないかなあ。
たとえ話にあえて乗っかると、必要なのは刀狩ではなくて廃刀令だろうと。もちろん、実名の言説も制限されるのですよ。実名だから誹謗中傷が許されるわけではない。
ウェブというメディアが情報統制をひくお上に対抗するためのメディアでそれに対する反抗の手段としての、人を傷つける武器としての、言葉を取り上げることを推進したいのであれば、この例えはそんなにおかしくないかもしれませんね。権力や既得権益側の言いたいことに近いようにも思える。本来制限されるべきは言葉なんじゃないかな。
でも言葉を制限することは実名でも誹謗中傷に近い発言が放置されている現状を見る限り、難しいと思うし、仮に制限できるとしたらその基準をどこに置くのか、結局お上の言うなりに表現を抑止される(というのも健全な社会としての一つの選択肢ではありますが)ことになるのではないか。となると、自由なメディアとしてのウェブは死ぬわけです(公には)。
他者の権利を守るべき職業の人としては「ペンは剣よりも強し」の精神を強く打ち出して欲しいものですが、匿名を刀といって非難しているようではそういうのは望むべくもないのでしょうか。
さて、不毛なたとえ話はおいといて。
匿名擁護論はいつまで経っても,匿名さんによって攻撃される側に我慢と屈服を求め続けるというところから一歩も踏み出さないからです。
現代の「刀狩り」に,「辻斬り」愛好家が反発しても,不思議ではない。: la_causette
というのは何度も何度も提示される踏み出した意見を無視するからそう勘違いしているだけじゃないの?
前述したように、度を越えた時に相手を訴えるためのトレーサビリティは十分だし、手続きの面についてももっと容易になってよいと多くの人が言っているわけですな。その上で、実名による誹謗中傷も繰り返されているわけだから、本質的には匿名実名の問題ではない、と言っているわけなんだけどね。
仮に「誹謗中傷の巣窟2ちゃんねるを何とかせよ」とか、そういう具体的な問題(かどうかはいろいろ意見があるとは思いますが)であれば、個別具体論として問題点を話すことは可能でしょうけれども、「匿名さん」という、ターゲットがなんだかわからない、mixiのニックネームすら許されない的なレベル感の言葉で「攻撃される」だ「私的制裁を加える地位」だなんだ言ったって理解されるわけがない。
次もなかなか。
だから,ネットでの発言の匿名性を守ろうと思ったら,むしろ,ネットサービス提供者に対し,匿名性の濫用を規制しまたはその濫用により第三者に生じた損失を補償するシステムを採用するように突き上げを行うべきなのです。しかし,ほとんどの匿名性擁護論者は,ほぼ一様に,被害者にその被害を甘受することを求めるのみです。これこそが,「匿名・実名」論争が何度も繰り返される理由です。
発言の匿名性を守りたい人こそがすべきこと: la_causette
これですよ。はっきり言って、これを理由として繰り返しているのは小倉先生だけかと。だってほとんどの匿名論の論客は「被害を甘受することを求める」ことなどない一方で、小倉先生は匿名さんたちに「プライバシーを暴露されることを甘受することを求める」わけですから、噛み合うわけがありません。罰せられるべきは行為であり、匿名という形態ではないわけですから、「濫用」を防ぐべき(損失を補償すべきとまではなかなかいえないけれども)という点で意見が一致していないとは思っていません。が、その手段が「(なんとかID含めた)実名にすべき」の繰り返しではどうにもならない。だって実名侍の辻斬り(また言っちゃったw)の現状を見るにつけ、実名ウェブで解決する問題に思えないもん。噛み合っていないのは匿名の濫用の話ではなくて目的の話なんです。合目的にするための仕組みによって起こる結果を改善したいということはそれなりにこの問題にコミットしている人にとっては共通する思いなんじゃないでしょうかねえ。で、目的を根底から揺るがす提案が拒否されるということは当然といえば当然。もちろん目的というのは匿名の陰に隠れて攻撃したい、という積極的なものではなく(この問題を問題として認識していない人はそうかもしれないけど、たいていの匿名論の論客において、ですよ)て、実名とリンクする必要のない活動をウェブで行いたい(その際リアル人格のプライバシーを確保したい)とか、それを公表することが社会的に不利益を生じさせる(差別されるとか、その類)ものがある人がそのことについて意見を提示したいとか、そういう発信側の事情や、ネットストーカー、実名匿名による誹謗中傷を避けたいという自己防衛行為などのことね。